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「運動の大切さはわかってるけど、仕事が忙しくて…」
そんな声、よく聞きませんか?
健康経営を進める上で、「運動機会の増進」は欠かせないテーマの一つ。
しかし現場では、「どう取り組めばいいのか分からない」「社員が参加しない」といった悩みも多く聞かれます。

Sailing Dayの羊一です!
今回は「運動=ハードルが高い」というイメージを変える取り組み事例をご紹介します。
1. “運動機会の増進”が求められる理由
「運動不足」は、いまや個人の課題ではなく“職場の課題”です。
仕事に追われて「歩く時間もない」「座りっぱなしが当たり前」そんな生活が続くと、肩こり・腰痛・肥満・メンタル不調といった健康リスクが高まるだけでなく、集中力やパフォーマンスの低下にもつながります。

どのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
①増える「座りすぎ」のリスク
厚生労働省によると、日本人の1日あたりの平均座位時間は世界でもトップクラス。特にデスクワーク中心の職場では、“1日9時間以上座っている人”の割合が50%超というデータもあります。
▶︎ 長時間の座りっぱなしは、糖尿病・心疾患・がんなどのリスクを高めると言われています。
②運動不足による健康リスクの増大
運動不足は、肥満や高血圧などの生活習慣病の要因となるだけでなく、筋力低下による仕事の生産性低下や日常生活への支障にもつながります。
さらに、「疲れがとれない」「気分が落ち込みやすい」など、メンタル面の不調を引き起こす要因にもなっているのです。
③企業の健康課題としても深刻化
健康経営に取り組む企業では、下記のような“体の不調”がパフォーマンス低下の一因とされています。
「腰痛が原因で通院が増えた」
「疲れがとれず集中力が続かない」
「運動不足が原因で健康診断に引っかかった」

今は“運動を取り入れてる会社”が選ばれる時代です。では、健康経営優良法人としてはどんな“運動の取り組み”が求められているのでしょうか?
2. 健康経営優良法人と「運動機会の増進に向けた取り組み」の関係
『健康経営優良法人認定制度』は、経済産業省が企業の健康経営の取り組みを見える化し応援するために、2016年から始まった制度です。
その認定要件の中に「運動機会の増進に向けた取り組み」があります。

健康経営優良法人の認定要件も一緒に見ていきましょう!
(1)健康経営優良法人の認定要件
「健康経営優良法人2025」(中小規模法人部門)の申請期間は2024年8月19日〜2024年10月18日でした。
認定結果は、2025年3月10日に発表されています。毎年その時期に行われる予定です。
必須項目が7つあり、その他項目が①〜⑮まであります。
その中で「運動機会の増進に向けた取り組み」はその他項目の⑩に該当します。

必須項目ではありませんが、評価項目の一つなのでやっておくと認定に有利になります!

(2)申請時のチェック項目
申請時に問われるのは、次のような 「具体的な取り組み」 です。
経済産業省が認定している「健康経営優良法人認定制度」には、申請する時に以下のチェック項目があります。
★Q1.運動機会の増進に向けた普及啓発等の具体的な支援として、どのような取り組みを行っていますか。
(いくつでも)
◆教育・研修や保健指導、情報提供(ポスター掲示等)は除きます。
<従業員参加>
1 運動機能のチェックができる機会を定期的に提供している
(例:体力測定、転倒等リスク評価セルフチェック表を使う機会を設ける、ロコモのチェック等)
(セルフチェックは情報提供に該当するため除く)
2 職場外のスポーツクラブ等との提携・利用補助を行っている
3 日常的な運動を奨励するイベント(ウォーキング大会等)を開催している
4 運動奨励活動(歩行や階段使用の奨励、表彰等)を行っている
5 運動促進のためのツールの提供(歩数計の配布、アプリ提供、動画配信等)を行っている
6 個別の状況やニーズに適した運動指導(運動メニューの作成等)を行っている
7 スポーツイベントの開催・参加補助を行っている
8 心身の健康増進を目的とした旅行(ヘルスツーリズム)を開催し、運動の習慣付けの指導を
行っている(従業員への金銭補助も含む)
<環境整備>
9 職場内に運動器具やジム、運動室等を設置している
10 職場において集団で運動を行う時間を設けている(例:ラジオ体操、ストレッチ、ヨガ等)
11 官公庁・自治体等の職域の健康増進プロジェクトへ参加している
(例:スポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」等)
12 スポーツ庁「スポーツエールカンパニー」の認定を取得している
13 立ち会議スペースや昇降式デスク等、通常の勤務を通して運動量が向上するオフィス設備を
設置している
14 運動習慣定着のため、徒歩通勤や自転車通勤のための支援や働きかけを行っている
15 運動機会の増進を目的とした同好会・サークル等の設置・金銭支援や場所の提供を行っている
16 いずれも特に行っていない ⇒評価項目不適合
(出典:経済産業省 健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請書より)
(3)企業事例
①東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)
【運動習慣の定着を促す「JREウェルネスチャレンジ」】
◎全社員が参加できる社内ウォーキングイベントを開催(年1回以上)
◎スマホアプリを使って歩数を可視化、グループ対抗戦などで楽しみながら継続
◎上位入賞者や参加者にはポイントや記念品を贈呈
【駅構内を活かした“歩ける環境”づくり】
◎社内に「徒歩奨励」ポスター掲示、エレベーターではなく階段利用を推奨
◎大規模オフィスでは「10分で歩ける会議室MAP」を配布し、社内移動を促進
【健康経営の一環として社内スポーツ支援】
◎野球・フットサルなど、社員のスポーツ活動を会社が支援
◎クラブ活動に対する助成金制度を設け、継続的な運動習慣の定着を支援
②損保ジャパン株式会社
【日常に“運動を組み込む”工夫】
◎社内で「歩数チャレンジ」を定期開催し、チーム戦で盛り上げる
◎昼休みに参加できるストレッチや軽運動のライブ配信を実施
◎エレベーターより階段利用を促すサインを社内に設置
【リモート勤務者にも運動機会】
◎在宅勤務者向けに「オンラインヨガ」や「自宅でできる体操」の動画を配信
◎ウェルビーイング(心も体も元気で、人間関係や社会的なつながりも良好な状態)に関する社内メルマガで“健康ミニコラム”を配信し意識づけ
【数値で見る健康意識の変化】
◎健康アプリ導入後、1日平均歩数が前年比+1,000歩に
◎「通院頻度の減少」「睡眠の質改善」などの変化が社内アンケートで確認された

続いて、企業事例でご紹介した2つの企業が健康経営優良法人「「運動機会の増進に向けた取り組み」においてどの項目に対応しているのか見ていきましょう!
(4)企業別チェック項目一覧表

健康経営優良法人「運動機会の増進に向けた取り組み」のチェック項目のどこに該当するのか以下の一覧表で整理してみました。自社での取り組みの参考として、ぜひチェックしてみてください!
チェック項目 | JR東日本 | 損保ジャパン |
---|---|---|
1. 運動機能チェックの機会提供 | ― | ― |
2. スポーツクラブ等の提携・補助 | ― | ◎ スポーツクラブ利用補助あり |
3. 運動奨励イベントの開催 | ◎ JREウェルネスチャレンジ(年1回以上) | ◎ 歩数チャレンジ(定期開催) |
4. 歩行・階段使用奨励、表彰等 | ◎ 階段利用促進ポスター、徒歩奨励MAP | ◎ 階段利用を促すサイン設置 |
5. 運動促進ツール提供(歩数計等) | ◎ スマホアプリで歩数記録 | ◎ 健康アプリ、動画配信 |
6. 個別の運動指導(メニュー作成等) | ― | ― |
7. スポーツイベントの開催・参加補助 | ◎ 社内スポーツ支援(野球・フットサル) | ◎ スポーツイベントの実施あり |
8. ヘルスツーリズムの開催・補助 | ― | ― |
9. 職場内に運動器具・ジム等設置 | ― | ― |
10. 集団運動の時間を設けている | ― | ◎ 昼休みストレッチ・軽運動配信 |
11. 官公庁・自治体プロジェクト参加 | ― | ◎ 官民プロジェクト参加あり |
12. スポーツエールカンパニー認定取得 | ― | ◎ スポーツエールカンパニー取得 |
13. 昇降デスクなどの設備導入 | ◎ 10分で歩ける会議室MAP | ◎ 昇降式デスク導入あり |
14. 徒歩・自転車通勤支援 | ― | ◎ 徒歩通勤の奨励あり |
15. 同好会・サークル等の金銭支援等 | ◎ クラブ活動への助成金制度 | ◎ サークル活動支援あり |
16. 特に行っていない(評価不適合) | ― | ― |

企業の取り組みはどれも本気で、しかも工夫されてますよね!「うちには無理かも…」と思っても大丈夫!このあとは、すぐに始められるアイデアを一緒に見ていきましょう!
3.今からできることリスト
1運動機能チェックの機会を提供する
▶︎ 年に1回の社内健康イベントで、体力測定やロコモチェックを実施
▶︎ 労働安全衛生委員会と連携し、簡単なバランステストや握力測定などを導入
2 スポーツクラブ等との提携・利用補助
▶︎ 地域のフィットネスクラブと法人契約し、利用料金の一部を補助
▶︎ 提携クラブの利用案内を社内ポータルサイトで周知
3 日常的な運動を奨励するイベントの開催
▶︎ ウォーキングチャレンジや階段利用チャレンジを部署対抗で実施
▶︎ 参加者に記念品や社内ポイントを配布するなど、継続の工夫を
4 歩行や階段使用の奨励・表彰
▶︎ エレベーター横に「あと○段でカロリー消費!」などポスター掲示
▶︎ 月間最多歩数や「昇り階段王」などユニークな社内表彰制度を導入
5 歩数計・アプリ・動画配信などのツール提供
▶︎ 健康アプリの活用を推奨し、歩数記録や社内ランキングを表示
▶︎ 朝礼前後に視聴できるストレッチ動画や、ライブ配信プログラムを定期配信
6 個別状況に応じた運動指導
▶︎ 産業医や保健師と連携し、個別に簡単な運動メニューやアドバイスを提供
▶︎ 保健指導の一環として、ウォーキングの目標設定をサポート
7 スポーツイベントの開催・参加補助
▶︎ マラソン大会・駅伝・社内球技大会の実施、または外部イベントへの参加補助
▶︎ チームウェアや交通費などの補助で気軽に参加しやすい環境を整備
8 ヘルスツーリズム(健康を目的とした旅行)の実施
▶︎ 社員旅行や研修にウォーキングツアーやハイキングを組み込む
▶︎ 健康をテーマにした体験型ツアーの実施を検討(温泉地・森林浴など)
9 職場内に運動器具やジム等を設置
▶︎ 空きスペースにストレッチコーナーや軽器具(ゴムバンド・バランスボール)を配置
▶︎ 昇降式デスクや立ち会議テーブルなど、活動量を上げる備品の導入
10 職場での集団運動時間の設置
▶︎ 朝のラジオ体操・昼のストレッチ時間を設けて定時実施
▶︎ 社内リーダーが交代で運動をリードし、習慣化を図る
11 官公庁・自治体等のプロジェクト参加
▶︎ スポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」などに企業単位で参加
▶︎ 健康経営の一環として、地域との連携をアピール
12 「スポーツエールカンパニー」の認定取得
▶︎ 社内での実績を活かして申請し、外部にアピール
▶︎ 認定ロゴの活用で、社員のモチベーション向上にも
13 昇降デスクや立ち会議スペースの導入
▶︎ 一部会議室に立ち会議用テーブルを導入し、集中力・効率UP
▶︎ デスクを段階的に昇降式へ移行し、体への負担を軽減
14 徒歩・自転車通勤を支援
▶︎ 駐輪場の整備や、通勤手当の一部を自転車利用者に転用可能に
▶︎ 徒歩・自転車通勤推進のキャンペーンを社内展開
15 同好会・サークル等への支援
▶︎ フットサルや登山など、運動系サークルの立ち上げを推奨
▶︎ 年間活動費やユニフォーム代を会社が一部補助する制度を導入

運動の機会は、“健康づくり”だけじゃなく、“会社づくり”でもあるんですね。できることから始めれば、社員も企業もきっと、もっと元気になれます!
4. まとめ
◎「運動不足」は、いまや個人の課題ではなく“職場の課題”
▶︎“体の不調”がパフォーマンス低下の原因になる
◎健康経営優良法人では「運動機会の増進」が評価対象
▶︎必須項目では無いがやっておくと認定に有利
◎企業が“運動できる仕組み”を整えることが重要
▶︎ウォーキングイベントや健康アプリの活用で“きっかけ”を作る
◎運動の機会は、“健康づくり”だけでなく、“会社づくり”でもある

