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「社員同士、ちゃんと会話できていますか?」
健康経営といえば、運動・食事・睡眠が注目されがちですが、今、見逃せないキーワードが『職場のコミュニケーション』です。
実は、何気ない会話や雑談が、社員のストレス軽減・メンタル安定・チーム力の向上に深く関わっています。
逆に、会話のない職場は、孤立や不調を招き、生産性や定着率にも影響します。

Sailing Dayの羊一です!
この記事では中小企業でもすぐに取り入れられるコミュニケーションの工夫と、実際の企業事例を交えながら新しい健康経営のあり方をご紹介します。
1.なぜ健康経営に「コミュニケーション」が必要なのか?
健康経営と聞くと、まずは「運動」「食事」「睡眠」のような生活習慣を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、近年注目されているのが、“人と人とのつながり=コミュニケーション”の重要性です。
働く環境が多様化し、リモートワークやフリーアドレスが浸透する中で「社員が孤立している」「気軽な相談がしにくい」といった課題が浮かび上がっています。

実はこの“会話不足”が、心と体にじわじわと悪影響を与えているのです!
【会話の少ない職場で起こるリスク】
❶ストレスの蓄積に気づきにくく、メンタル不調の温床になる
❷小さなミスやトラブルの共有が遅れ、業務効率が落ちる
❸孤独感・疎外感からモチベーションが低下し、離職につながることも

「話せる職場」は社員のメンタルの安全装置にもなり得るということですね!
【事例】GMOインターネットグループ「GMO Yours」
GMOインターネット株式会社では、社員の働きやすさとつながりを大切にするため、
社内に『24時間利用可能なカフェ「GMO Yours」』を設けています。
このカフェでは、ランチビュッフェやドリンク・お菓子がすべて無料で提供されており、
社員が部署を超えて自由に集まり、会話や情報交換を行える環境が整っています。
コミュニケーションを生む仕組み
通年で実施しているバースデーパーティの他にも、春はお花見、夏には夏祭りなど、社内のコミュニケーションを活性化するためのイベントを定期的に開催しています。
また、金曜の夜にはバーに変身し、生ビールや日本酒、ワイン、カクテル等のお酒とお食事を無料で提供しています。
2.今日からできる!職場のコミュニケーション術3選
『会話のきっかけがない』『話す時間がない』『なんとなく空気が重い』
そんな職場の雰囲気を変えるには、無理なく自然に話せる仕組みをつくることがポイントです。

ここでは、中小企業でもすぐに取り入れられる3つの実践術をご紹介します。
(1)「食」を通じたつながりをつくる

食事は、誰にとっても“毎日必ず行う行動”のひとつ。
だからこそ、「一緒に食べる」「食べながら話す」ことが、最も自然なコミュニケーションにつながります。
【取り組み例】
①昼食時に社員同士が集まりやすい共有スペースを整備
②置き型惣菜サービス(例:オフィスおかん)やお弁当補助制度を導入
③お菓子やドリンクを自由に楽しめる“交流コーナー”を設置
【事例1】日本ビジネスシステムズ株式会社(JBS)「Lucy’s CAFE & DINING」
ITソリューションを提供する日本ビジネスシステムズ株式会社では、本社以外で働く従業員も多く、離れた拠点に分かれて働く社員がコミュニケーションを図れる環境を作り出すにはどうすればいいかというのが課題でした。
それで人が集まりたくなるような場所を作るということで社員食堂 Lucy’s CAFE & DININGを開設しました。
おしゃれダイニング風のこの社員食堂では、終日カフェ利用が可能であり、社員はランチ・ディナーを外のカフェやレストランよりもリーズナブルな価格で楽しむことができます。
ちなみにディナータイムはお酒を楽しむこともできます。
【事例2】西日本高速道路エンジニアリング九州株式会社
同社では、オフィスビルのリニューアルに際し社員のリフレッシュとコミュニケーション促進を目的としてカフェをイメージしたリフレッシュ空間を構築しました。
【特徴的な取り組み】
①一人で過ごせるカウンターテーブルや、複数人で利用できるテーブル席を設置。
②小上がりの畳コーナーを設け、リラックスできる空間を提供。
【事例3】株式会社シーエスラボ
株式会社シーエスラボでは、従業員満足度の向上と健康経営の推進を目的として、社内の食事環境を整備しました。
【取り組み内容】
①新工場の設立に合わせて、オフィスおかんを導入し、従業員が手軽にバランスの取れた食事をとれるようにしました。
②お菓子やドリンクを自由に楽しめるスペースを設置し、休憩時間のリフレッシュや社員同士のコミュニケーションを促進しています。

これにより、従業員の健康意識が高まり、職場の雰囲気も明るくなったと報告されています。

社員同士が自然と集まり、部署を超えた交流が生まれる場となっていますね!

(2)「ありがとうカード」
「ありがとう」と声をかける。
たったそれだけの一言が、職場の雰囲気を大きく変える力を持っています。
しかし、忙しい日常の中で感謝の気持ちを伝えるのは、意外と難しいもの。
そこで効果的なのが、「ありがとうカード」などの見える感謝の仕組みです。
🌸ありがとうカードって何?
社員同士が日々のちょっとした気づきや助け合いに対して「ありがとう」「助かりました」「うれしかったよ」と、短いメッセージをカードや付箋に書いて伝える仕組みです。
たとえば…
◎直接渡す
◎社内に「ありがとう掲示板」を設置
◎デジタルで社内チャットに投稿する
◎月1回「ありがとう大賞」などを企画して紹介
◎朝礼や会議の冒頭で「誰かにありがとうを伝える時間」を設ける
など、形は自由でOK。大切なのは「感謝を伝える習慣」をつくることです。

費用もかからず、誰でも今すぐ始められるコミュニケーション施策!健康的で前向きな職場文化を育てていく、大切な一歩ですね!
🌸職場に、もっと「ありがとう」を。
この取り組みには、目に見える効果がたくさんあります。
◎職場の空気が柔らかくなる
◎上司・部下・部署間の垣根が低くなる
◎感謝の文化が育ち、心理的安全性が高まる

感謝の言葉は、人の「自己肯定感」や「やる気」を引き出します。何気ない一言が「自分は認められている」「チームの一員なんだ」という感覚につながるのですね。
3.雑談できる「仕掛け」をあえてつくる
「雑談=ムダ」ではありません。
実は、雑談にはストレスを緩和し、信頼関係を築き、チームの創造性を高めるという大きな力があります。
ところが今の職場では、在宅勤務や時短勤務など働き方が多様化し、偶然の会話が生まれにくくなっているのが現実です。
だからこそ必要なのが、“あえて雑談が生まれる仕掛け”をつくることです。
(1)なぜ「雑談」が大切なのか?
✔️心の緊張をほぐす「緩衝材」の役割
✔️相手の人柄や考え方を知る機会になる
✔️知らない情報が共有され、創造性が生まれる

雑談は、『仕事モード』の枠を超えたコミュニケーションの架け橋。業務に直結しないようでいて職場全体の風通しに深く影響しているのですね!

(2)仕掛けのつくり方

では、どうやって仕掛けをつくればいいのでしょうか?日常に自然と雑談が生まれるような仕掛けをご紹介します。
【雑談のきっかけを自然に増やすことができる4例
①朝礼の前に3分間「雑談タイム」を設ける
▶︎天気・趣味・最近の発見などを自由に話す時間
②社内に“雑談OKエリア”をつくる
▶︎コーヒーマシン周辺、共有ラウンジなど
③チャットツールに「雑談チャンネル」をつくる
▶︎リモート勤務でも気軽なやりとりが可能に
④週1の「雑談ランチ会」や「フリートーク朝会」
▶︎部署を超えた交流の場になる

“話していい空気”をつくることが実は働きやすい職場づくりの近道。今日から一歩、仕掛けてみましょう!
4. 健康経営優良法人と『コミュニケーションの促進に向けた取り組み』の関係
『健康経営優良法人認定制度は』経済産業省が健康経営の取り組みをする企業を見える化して応援するために、2016年に作られた評価制度です。
その認定要件の項目の中に『適切な働き方実現に向けた取り組み』があります。

健康経営優良法人の認定要件も一緒に見ていきましょう!
(1)健康経営優良法人の認定要件
「健康経営優良法人2025」(中小規模法人部門)の申請期間は2024年8月19日〜2024年10月18日でした。
認定結果は、2025年3月10日に発表されています。毎年その時期に行われる予定です。
必須項目が7つあり、その他項目が①〜⑮まであります。
その中で『コミュニケーションの促進に向けた取り組み』はその他項目の⑥に該当します。

(出典:健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)認定要件より)
(2)申請時のチェック項目
経済産業省が認定している「健康経営優良法人認定制度」には、申請する時に以下のチェック項目があります。
Q1.コミュニケーション促進に向けて、どのような取り組み(研修・情報提供・宴会等を除く)を
行っていますか。(いくつでも)
◆一部の従業員に参加を募ったものは該当しません。
◆接待や営業目的のイベント開催等を除きます。
1 フリーアドレスオフィス等の職場環境整備を行っている
2 社内ブログ・SNSやチャットアプリ等の従業員間コミュニケーション促進ツールの利用を
推進している
3 従業員同士の交流を増やすための企画を実施している
(例:意見交換会、一言スピーチ、社内掲示板の活用、サンクスカード等)
4 同好会・サークル等の設置・金銭支援や場所の提供を行っている
5 社員旅行や家族交流会・昼食会等のイベントの開催・金銭支援や場所の提供を行っている
6 ボランティア、地域祭り等に組織として関与し、従業員が参加するような働きかけを行っている
7 従業員同士が感謝を伝え合うことに対してインセンティブの付与を行っている
(社内通貨、社内サンクスポイント制度など)
8 特に行っていない ⇒評価項目不適合

では、コミュニケーション施策を実施したら、申請用の“見える化”も忘れずに!続けて、申請に向けて項目毎のポイントを確認していきましょう!
(3)コミュニケーション促進に向けた取り組み【今からできることリスト】

ここからは健康経営優良法人の申請時に役立つ『今からできること』を具体的にご紹介します!
①フリーアドレスオフィス等の職場環境整備を行っている
▶︎会議室・ラウンジを「自由席スペース」として解放
▶︎フリーアドレス導入の社内ルールを明文化・告知
②社内ブログ・SNSやチャットアプリ等の従業員間コミュニケーション促進ツールの利用を推進している
▶︎Chatwork・Slack・Teamsの「雑談チャンネル」を開設
▶︎社内報やメールマガジンを週1配信(社内の取り組み・写真など気軽な話題も入れる)
③従業員同士の交流を増やすための企画を実施している
(例:意見交換会、一言スピーチ、社内掲示板の活用、サンクスカード等)
▶︎「ありがとうカード」「一言スピーチタイム」を朝礼に組み込む
▶︎社内掲示板 or デジタル掲示板に「今月のありがとう」コーナーを設置
④同好会・サークル等の設置・金銭支援や場所の提供を行っている
▶︎「趣味サークル募集のお知らせ」を全社メール・掲示で配信
▶︎サークル活動費用として1サークル年1万円程度の補助枠を用意
⑤社員旅行や家族交流会・昼食会等のイベントの開催・金銭支援や場所の提供を行っている
▶︎オンライン懇親会 or 昼食会の実施(ランチ代の一部補助)
▶︎部署単位で年1回の交流会費用を補助
⑥ボランティア、地域祭り等に組織として関与し、従業員が参加するような働きかけを行っている
▶︎地域の清掃活動やチャリティイベント情報を社内掲示
▶︎参加者に「ボランティア休暇」or「社内報での紹介」など特典付与
⑦従業員同士が感謝を伝え合うことに対してインセンティブの付与を行っている
(社内通貨、社内サンクスポイント制度など)
▶︎「ありがとうカード」を月ごとに集計して「ありがとう大賞」選出+景品付与
▶︎社内通貨やサンクスポイント制度は難しい場合、まずは「称賛の場」をつくるだけでもOK
⑧特に行っていない → 評価項目不適合
▶︎ 1項目でもすぐ実行・記録に残すことが重要
▶︎簡単な取り組み(ありがとうカードや雑談チャンネル)からまず1歩!

“やっている”だけでは評価されません。“やったことが証拠として残っている”ことが大事!今からできることから少しずつ積み重ねていきましょう。
(4)申請時に残すべき証拠

せっかく良い取り組みをしていても、申請時に「証拠がない」と評価対象外になることも。やったことは“見える化”+“残す”のが鉄則!
【残しておくべきデータ・証拠例】
① 社内メールや掲示ポスターのPDF/写真
▶︎ 雑談タイム・イベント実施案内/ありがとうカード募集のお知らせ など
② 取り組み結果の記録
▶︎ ありがとうカード累計枚数、イベント開催回数と参加者人数、サークル設立状況 など
▶︎ チャットツール(Slack・Teamsなど)の雑談チャンネルの投稿画面のキャプチャ保存
③社内規程やイントラ掲載のルール文面
▶︎ 雑談OKエリアの利用案内、フリーアドレスの社内ルールなど
④写真付きの実施報告
▶︎ イベント(昼食会・ボランティア活動など)の写真+簡単な実施報告メモ
▶︎ 掲示板やリフレッシュエリアの現状写真も◎

コツは【申請用フォルダをつくって、そこに全部まとめておく】こと。年度末の慌ただしい時期でもスムーズに対応できますよ!“働きやすい職場”は今や会社の競争力そのもの。経営の視点でも、社員の未来のためにも、できるところから一緒に取り組んでいきましょう!
5. まとめ
◎コミュニケーションは「健康経営」の重要な柱
▶︎ 孤立防止・メンタル安定・チーム力強化につながる
◎雑談は職場の「緩衝材」になる
▶︎ ストレス緩和・創造性促進・信頼関係の構築に役立つ
◎「仕掛け」をつくることで自然な会話が生まれる
▶︎ 雑談タイム・雑談OKエリア・チャットチャンネル・ランチ会など
◎ありがとうカードは低コストで高効果
▶︎ 感謝の文化が心理的安全性を高める
◎健康経営優良法人では「コミュニケーション促進」が評価項目
▶︎ 取り組みはルール化・記録化・見える化が必須
◎証拠が残っていないと評価対象外になる
▶︎ 実施記録・メール/掲示の証拠・写真付き報告を残すことが重要

