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「最近は喫煙者も減ってきたし、特に何もしていなくても平気だ。」
そう思っていませんか?
確かに日本の喫煙率は年々低下していますが、企業が自然に任せていては、喫煙率は思うように下がりません。
喫煙は個人の自由ですが、健康経営を進める上では、企業として“喫煙率を下げる仕組み”を整えることが重要です。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。
このブログでは、無理なく実践できる喫煙率低下の取り組みを、成功企業の事例や中小企業向けの具体策を交えてわかりやすく紹介します。
1. 喫煙は“悪”ではないが、企業としての対応が求められる
喫煙は嗜好であっても、職場においては“経営判断が問われる健康リスク”と捉える必要があります。

(1)喫煙が健康経営で問題視される5つの理由
①健康への悪影響
喫煙はがん・心臓病・脳卒中など重大疾患の原因に。生活習慣病のリスクも高まる。
②医療費の増加
喫煙者は非喫煙者に比べて医療費がかかり、企業負担が増す。
③生産性の低下
喫煙による離席、集中力の低下、体調不良などで、仕事効率に影響が出る可能性がある。
④受動喫煙の問題
喫煙しない人への健康被害や、不快感・人間関係のトラブルの原因にもなる。
⑤職場の印象・採用力の低下
「喫煙OKの職場=古い価値観」とみなされ、若手人材から敬遠されることも。
ですが、健康経営優良法人の認定では、「喫煙者ゼロ」を求めているわけではありません。評価されるのは、喫煙率を下げるためにどんな取り組みをしているかです。

吸う人・吸わない人、どちらにも配慮された環境作りが大切です!
(2)喫煙率を下げるための取り組み
◎禁煙外来の紹介や費用補助
◎喫煙所の見直し(受動喫煙対策)
◎ 禁煙チャレンジキャンペーンの実施
◎ 就業時間中の禁煙ルール など
例えば、このような取り組みを通じて、「従業員の健康に配慮している会社」としての姿勢を見せることが、健康経営の評価につながります。
2. 健康経営優良法人認定制度申請時のチェック項目
経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。
1.たばこの健康影響についての教育・研修を行っている
2.喫煙率を下げることを目的とした継続的な保健指導または禁煙外来治療の補助を行っている
3.禁煙補助剤の無償支給や購入費支給を行っている
4.禁煙達成者に対する表彰やインセンティブの付与を行っている
5.非喫煙者に対する継続的なインセンティブの付与を行っている(例:手当や有給の特別休暇・休憩時間等)
6.喫煙に関する就業ルールを整備している(例:事業場外も含めた就業時間中禁煙、喫煙可能な時間の制限等)
※事業場内全面禁煙や分煙など場所に応じた禁煙ルールは、Q28の受動喫煙対策となるため、該当しません。
7.禁煙・禁煙継続を促す社内イベントを実施している(例:禁煙月間、禁煙デー等)
8.禁煙・禁煙継続を促すアプリを提供している
9.特に行っていない ⇒評価項目不適合
(1)喫煙率低下に向けた取り組み 参考企業例
田辺三菱製薬株式会社
社員の健康保持・増進の一環として、喫煙に対するリスク管理と卒煙支援に積極的に取り組んでいます。
◎2017年から3ヵ年卒煙プログラムを実施し、社内全時間禁煙・敷地内禁煙・就業時間内の喫煙の取り決めについて就業規則へ明記した。
◎会社、健康保険組合、労働組合が連携し、卒煙推進体制を構築。毎年5月31日の世界禁煙デーには、労使のトップが禁煙推進メッセージを発信し、禁煙推進の風土づくりを進めている。
◎会社と健康保険組合のコラボで「Oneチームキャンペーン」を実施。各事業所でも独自の卒煙イベントを行い、個別性の高いサポートで禁煙を支援している。
この結果、2017年20.6%だった喫煙率が、2023年には9.7%になりました。
(参考:田辺三菱製薬株式会社HP より)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.たばこの健康影響についての教育・研修を行っている
2.喫煙率を下げることを目的とした継続的な保健指導または禁煙外来治療の補助を行っている
3.禁煙補助剤の無償支給や購入費支給を行っている
4.禁煙達成者に対する表彰やインセンティブの付与を行っている
5.非喫煙者に対する継続的なインセンティブの付与を行っている(例:手当や有給の特別休暇・休憩時間等)
6.喫煙に関する就業ルールを整備している(例:事業場外も含めた就業時間中禁煙、喫煙可能な時間の制限等)
アクサ生命保険株式会社
従業員が心身ともに健康で健全に働ける職場づくりを目指し、施策を実施しています。
◎就業規則で就業時間内禁煙と定めている
◎喫煙者に対しては健康保険組合による各種禁煙サポートプログラムを提供
(オンライン禁煙サポート:費用57,000円を補助、禁煙外来サポート/禁煙補助薬サポート:15,000円を限度に実費補助)
◎継続して喫煙率低下を目指すため、ホワイト500認定企業の喫煙率と同等水準を目標としている
2020年は27.1%だった喫煙率が2023年には25.6%に減少。今後20%以下になるよう目標を掲げています。
(参考:アクサ生命保険株式会社 HPより)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.たばこの健康影響についての教育・研修を行っている
2.喫煙率を下げることを目的とした継続的な保健指導または禁煙外来治療の補助を行っている
3.禁煙補助剤の無償支給や購入費支給を行っている
4.禁煙達成者に対する表彰やインセンティブの付与を行っている
株式会社ワコールホールディングス
お客さまに”美”と”健康”を届ける企業として、社員の自律的な健康管理を積極的に支援し、一人ひとりが心身ともに美しく健やかに活動できる環境づくりを通して、活力に満ちた健康経営を目指しています。
◎禁煙タイムの拡大
◎喫煙対策の強化を目的に、2020年4月から就業時間内の禁煙を実施。
◎喫煙者に対しては、2年間の禁煙サポートプログラムを無償で提供している。
この結果、ワコールにおける全体の喫煙率は3.6ポイント低下(15年度19.1%→18年度15.5%)しました。
(参考:株式会社ワコールホールディングスHP より)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
2.喫煙率を下げることを目的とした継続的な保健指導または禁煙外来治療の補助を行っている
3.禁煙補助剤の無償支給や購入費支給を行っている
(2)中小企業が今すぐ始めたい取り組み
先ほどご紹介した健康経営優良法人認定のチェック項目に合わせて、どんなことができるか見てみましょう。
1.たばこの健康影響についての教育・研修を行っている
→社内メールや掲示板で「喫煙の健康影響」や「受動喫煙のリスク」に関する資料を定期配信したり、健診結果返却時に「禁煙のすすめ」など資料を同封してみる。
2.喫煙率を下げることを目的とした継続的な保健指導または禁煙外来治療の補助を行っている
→健診後、喫煙者には「禁煙外来」の案内資料を配布する。協会けんぽ・健保組合の禁煙サポート制度を案内する。禁煙外来の受診費用を1回分だけでも補助してみましょう。
3.禁煙補助剤の無償支給や購入費支給を行っている
→禁煙を始めるハードルを下げるには、「費用の補助」は最も即効性のあるサポート。たとえば、ニコチネル パッチなどの禁煙補助剤の購入費(上限3,000円など)を会社が負担する制度が効果的です。
4.禁煙達成者に対する表彰やインセンティブの付与を行っている
→3か月以上禁煙した人に表彰状・商品券などを贈呈する。「卒煙チャレンジ制度」として社内で呼びかけしてみましょう。インセンティブは、他にも非喫煙者手当や特別有給休暇の付与なども良いです。
5.非喫煙者に対する継続的なインセンティブの付与を行っている(例:手当や有給の特別休暇・休憩時間等)
→「非喫煙者手当(月500円)」など制度化する。有給とは別の「ウェルネス休暇(1日/年)」を非喫煙者に付与したり、非喫煙者限定の福利厚生特典(カフェ券など)を用意するのも◎
6.喫煙に関する就業ルールを整備している(例:事業場外も含めた就業時間中禁煙、喫煙可能な時間の制限等)
→「就業時間中禁煙」をルールとして明文化する。喫煙は休憩時間内・所定の場所のみとし、注意喚起ポスターを掲示する。就業規則に「喫煙ルール」を追記しましょう。
7.禁煙・禁煙継続を促す社内イベントを実施している(例:禁煙月間、禁煙デー等)
→「今月は禁煙チャレンジ月間!」などイベントを実施。ランチタイムに簡単な禁煙情報を共有する。
8.禁煙・禁煙継続を促すアプリを提供している
→無料の禁煙アプリ(例:「禁煙ウォッチ」「つらくない禁煙」など)を社内メールで「おすすめ禁煙アプリ特集」として紹介する。
<iPhone>
<Android>
喫煙対策は、「一律に禁止する」よりも、「選べる」「応援される」環境づくりがポイントです。

できることから一歩ずつ、社員の健康と職場の信頼性を高めていきましょう。
(3)申請にあたり保存しておくべきデータ
健康経営優良法人の申請に際しては、申請内容の正確性と信頼性を確保するため、申請期間の最終日から2年間、申請内容を裏付ける資料の保存が義務付けられています。
「喫煙率低下に向けた取り組み」では、下記のデータが求められる場合があるので、用意しておきましょう。
喫煙率低下に向けたルール・制度が明文化された資料
もしくは
研修や禁煙指導の実施記録 等
担当者は、しっかり資料をまとめておきましょう。
データ類は、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた場合には1週間以内に対応しましょう。
3. まとめ
◎ 喫煙は“個人の自由”ではあるが、企業にとっては健康リスク
▶︎ 病気リスク・医療費・生産性低下・採用面でも影響大
◎ 健康経営では「喫煙者がいてもOK」
▶︎ 評価されるのは“改善に向けた取り組み”の有無
◎ 中小企業でも取り組みやすい例
▶︎ 禁煙外来・補助制度の紹介
▶︎ 喫煙ルール(就業時間中禁煙など)の明文化
▶︎ 禁煙チャレンジやインセンティブ付与
▶︎ 非喫煙者への手当や休暇など公平な制度づくり
◎ 取り組み成功企業も多数(田辺三菱製薬・アクサ生命など)
▶︎ 就業時間内禁煙、禁煙サポート制度、社内表彰などで成果
◎ “吸う人も吸わない人も働きやすい職場”づくりが大切
▶︎ 小さな一歩から始めて、健康経営を前進させよう