健康経営で睡眠が重要視される理由

「どうして企業が睡眠に関心を持つべきなのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

確かに、睡眠はプライベートな問題のように感じるかもしれません。しかし、実は睡眠の質は社員の健康や生産性に直結し、企業全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます

「従業員の健康が企業の成長を支える」という健康経営の考え方において、なぜ睡眠が特に重要視されるのか、その理由を詳しく解説します。

健康経営とは?睡眠が果たす役割

健康経営とは、従業員の健康を企業の経営戦略の一環として位置づけ、積極的に取り組むことで、社員の生産性を高め、企業の持続的な成長を目指す経営方針です。

特に「睡眠」は、心身のリフレッシュやストレス管理にとても大切な要素であり、従業員のパフォーマンスを最大限に引き出すためにとても重要な役割を果たします。

ここでは、健康経営で「睡眠」が必要な理由を3つお伝えします。

日本人特有の睡眠不足

1つ目は日本人特有の睡眠不足があるためです。

日本は、昔から「睡眠不足の国」とも言われているほど、睡眠に関して悩んでいる人が多いのです。そのため、健康経営において睡眠を改善することで「生産性が上がるのではないか」と着目されているのです。

一般的に、日本人の平均的な睡眠時間は6時間前後と言われており、OECD加盟国27カ国中でワースト1位となっています。

また、日本人の睡眠時間が6時間未満の人が4割にも及んでいます。

6時間未満の睡眠が一週間続くと、徹夜した状態と同じような能力まで低下してしまいます。

健康経営で睡眠に着目して改善を行うだけでも企業としても従業員たちにしても、メリットが豊富になっていくのです。

睡眠の質でストレス値が上がる

2つ目の理由は、睡眠の質が悪いとストレスがたまりやすくなるからです。

睡眠不足が続くと、日常の業務でストレスが増え、「小さなミス」が多くなります。その結果、心に大きなダメージを受け、メンタルヘルスが悪化してしまうことがあります。

こうした状況が続くと、従業員の退職や休職のリスクが高まるため、「睡眠」がとても重要だとされています。

企業にとっての不利益が大きい

3つ目の理由は、企業にとって大きな損失が生じるという点です。

睡眠を改善しないと、従業員の退職者や求職者が増えていき、企業の損失が増えてしまいます。

経済産業省の調査では、睡眠不足の従業員がいることで、企業は年間約32万円の損失が発生することが分かっています。

企業によってはそれほど大きな額ではないと思うかもしれませんが、これはあくまで目安です。企業の規模が大きければ、その損失も増えますし、人数が少ない中小企業では休職者が出ることで業務が滞り、さらに損失が広がる可能性があります。

また、従業員の体調不良による医療費負担も増えるため、企業の損失を減らすためにも、睡眠の改善に企業が率先して取り組むことが大切なのです。

企業にできる健康経営の睡眠改善方法とは?

企業にとって従業員の睡眠不足は、さまざまな損失を生むことが理解できたと思います。

しかし「実際に健康経営として、どう睡眠改善を行っていけば良いのか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

健康経営において「睡眠が大切」と言われても、プライベートの問題とイメージされやすいため、企業として行う改善方法を考えるのが難しいのが現状です。

そこで、ここからは企業だからやってほしい「企業にできる健康経営の睡眠改善方法」を3つご紹介していきます。

睡眠リテラシーを上げる環境作り

1つ目は睡眠リテラシー(睡眠に関する正しい知識・認識・行動)を上げる環境作り」をすることです。

健康経営において「睡眠」の着目が大切にされていても「どう睡眠を改善していけば良いのか」と悩んでいる従業員も多いと思います。

ただ、「ちゃんと睡眠をとりましょう!」だけでは正直何も変わらないでしょう。

しっかりと従業員に対して、睡眠の知識を発信し、認識してもらい、具体的にどのように睡眠を改善していくのかを提示しなければ意味がありません。

例えば、企業全体で「睡眠」に関する知識や解決策を社内報で発信し共有する。日常にお昼寝を取り入れられるよう昼休みの後に昼寝時間を20分作る。残業ゼロを目指す。など、企業に合わせて考えていく事ができます。

経営トップの健康経営の睡眠への意識改革

2つ目は「経営トップの健康経営睡眠への意識改革」です。

最近では、法の整備などによって減少していきましたが「睡眠を削ってでも、会社に尽くすべきだ」「昔は、寝ないで仕事をすることが多かった」など、健康経営の「睡眠」に関するリスクをわかっていない方もいます。

そのような方が企業のトップとして立ってしまうと、「健康経営における睡眠」への着目がなくなってしまうのです

ちなみに、厚労省が発表している『健康づくりのための睡眠指針』では、17時間以上起きている場合、認知・作業能力が酒気帯び運転の際と同程度のレベルまで低下すると書かれています。

それほどまでに、企業における健康経営の睡眠への考え方が必要になっていくのです。

そのため、まずはトップが健康経営のことを学び、それを従業員たちに伝えていくことが大切です。

睡眠に対する相談場所の設置

3つ目は睡眠に対する相談場所の設置」です。

いくら企業側が従業員たちに対して、健康経営における睡眠の大切さを力説したとしても、従業員たちは「どう改善していけば良いのか」がわかりません

また、会社の方針で健康経営における睡眠を前面に押し出しても、現時点で「睡眠の質」に悩んでいる方にとって「誰に相談していけばいいのか」と悩んでしまうのです。

「睡眠の質の低下」は、プライベートな側面もあるため「こんな悩みで誰かに迷惑をかけられない」と思っている方も非常に多いのです。

そこで、企業の方針として健康経営における睡眠の質の改善を行うことが決まったら、まず「相談窓口」を設置することが大切です。

「睡眠の相談窓口」を設置するときは、産業保健スタッフとの面談が気軽にできるような機会づくり。

また、医療機関やカウンセリングなどを従業員の方が気軽に利用できるようにしていくことで、企業全体が健康経営における「睡眠」に着目していると言えるのです。

まとめ

健康経営における「睡眠」は、企業全体で取り組むことが大切

今回は、健康経営が「睡眠」に着目する理由と、企業がどのようにして健康経営の睡眠に取り組んでいけば良いのかをご紹介しました。

企業で健康経営を進める際に、睡眠の改善が推奨されている理由を理解し、トップの意識改革も重要ですが、それだけでは十分ではありません。従業員全員が「なぜ健康経営において睡眠の改善が重要なのか」を理解し、それを基にして、どうやって睡眠の質を高める取り組みを進めていくかを共有することが大切です。

「健康経営の睡眠の重要性」を知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。