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「風邪が流行っていて、社員が次々とダウンしている。」
こうした状況、どの企業でも起こり得ると感じていませんか?
でも実はそれ、会社の対応次第で防げたかもしれません。
感染症対策は、企業規模に関係なく「やっているか、いないか」がすべてです。
とくに中小企業では、たった1人の欠勤が業務全体に影響することも珍しくありません。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。
今回は、まだ健康経営に取り組んでいない企業でもできる、「感染症予防の第一歩」をわかりやすくご紹介します。
1. 健康経営優良法人における感染症予防とは?

感染症予防の目的は、単なる罹患防止にとどまらず、「安心して働ける職場づくり」を実現することです。
感染症とは、職場内での感染拡大が懸念される病気(インフルエンザ・ノロウイルス・麻疹・帯状疱疹など)です。
感染症にかかると従業員の出勤停止や業務への影響を引き起こす可能性があります。
「感染症予防に関する取り組み」は、新型コロナウイルス感染症流行後以降、企業としての対応力や衛生管理体制がより重視されています。

しっかり取り組むことにより、従業員の健康リスクを下げ、業務の継続性(BCP:事業継続計画)を高める効果があります。
2. 感染症予防に関する5つの取り組み
健康経営優良法人の申請では、感染症予防の取り組みについて、以下のような点が評価されます。
難しい設備投資をしなくても、社内ルールの整備や日常的な衛生管理の見直しで十分に対応可能です。
①社内ルールの整備と従業員への周知
感染症が広がる前に備えておくことが大切
◎発熱や体調不良時の出勤停止ルール
◎ワクチン接種の推奨と社内での対応(勤務扱いや休暇など)
◎感染が疑われる場合の連絡体制や対応フロー
ルールは紙で掲示・配布するだけでなく、朝礼やチャットツールなどでこまめに周知。
②日常的な衛生管理と環境整備
感染症を防ぐには、職場の衛生環境を整えることが基本
◎アルコール消毒液の設置(出入口・会議室など)
◎定期的な換気・清掃の実施
◎飛沫防止のアクリル板やパーテーションの活用
◎座席間の距離確保やレイアウトの見直し
「一度整えたら終わり」ではなく、定期的な点検がポイント。
③情報提供・社員への啓発活動
正しい知識があるだけで、無用な不安や混乱は避けられる
◎季節性インフルエンザや新型コロナなどの注意喚起ポスター掲示
◎社内報・メールでの衛生情報の発信
◎健康管理や感染予防に関するミニ研修の実施
従業員が「自分ごと」として捉える工夫が、予防行動につながる。
④ワクチン接種の支援体制
社員が安心してワクチンを受けられる環境づくりも評価対象
◎ワクチン接種の勤務扱い・特別休暇の付与
◎接種会場や予約方法の案内
◎副反応が出た場合の柔軟な勤務対応
制度があっても“使いやすさ”がなければ意味がない。
⑤感染拡大時の業務体制と緊急対応
感染症が広がった場合でも、業務が止まらない体制の整備も求められる。
◎クラスター発生時の社内報告ルール
◎在宅勤務やシフト調整の仕組みづくり
◎オンラインツールの導入・定着
「もしも」の時に慌てないよう、シミュレーションをしておくと安心。

感染症予防は、大規模な設備投資が必要と誤解されがちですが、今回ご紹介したように、ルールの明文化や日常的な衛生管理など、今すぐ始められることもたくさんあります。
3. 健康経営優良法人認定制度申請時のチェック項目
経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。
1.インフルエンザの予防接種を社内で実施している
2.インフルエンザの予防接種の費用を補助している(一部負担の場合を含む)
3.麻しん、風しん等の予防接種の社内実施または補助を行っている
4.予防接種を受ける際に就業時間認定や有給の特別休暇付与等の制度的配慮を行っている(家族が予防接種を受ける際の付き添いを含む)
5.感染症を発症した者(家族が発症した場合を含む)への有給の特別休暇付与による感染拡大予防を行っている
6.健康診断時に麻しん・風しん等の感染症抗体検査を実施している
7.感染拡大時の事業継続計画を策定している
8.海外渡航者に対する予防接種や予防内服等の準備を行っている
9.海外渡航者に対する教育の実施や緊急搬送体制の整備を行っている
10.感染症のワクチンに対する従業員のリテラシーを高めるための教育・研修を行っている
11.事業場において換気設備の整備や換気ルールの導入を行うなど、職場の環境整備を行っている
12.特に行っていない ⇒評価項目不適合
(1)感染症予防に関する取り組み 参考企業例

富士通株式会社
富士通および国内グループ会社では、様々な感染症から社員を守るため、相談窓口の設置、情報提供など積極的な対策を講じている。感染症の予防対策として、季節性インフルエンザ予防接種を社内で実施するほか、海外赴任者を対象とした赴任先ごとに推奨される予防接種(会社負担)を実施。また、近年流行が拡大している風しんは自治体と連携し、事業所での教育や啓発を実施している。
(出典元:富士通株式会社 HPより)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.インフルエンザの予防接種を社内で実施している
3.麻しん、風しん等の予防接種の社内実施または補助を行っている
8.海外渡航者に対する予防接種や予防内服等の準備を行っている
9.海外渡航者に対する教育の実施や緊急搬送体制の整備を行っている
10.感染症のワクチンに対する従業員のリテラシーを高めるための教育・研修を行っている
住友商事株式会社
感染症予防の一環として、本社ビル内でインフルエンザ予防接種を実施し、また外部クリニックで受診する場合には健康保険組合より被保険者及び被扶養者に対して補助している。
新型コロナウイルスにとどまらず、HIV(エイズ)、結核、マラリアといった世界的に深刻な感染症への対策にも積極的に取り組んでおり、海外赴任前に健康診断を実施や、渡航先に応じた感染症の予防接種を推奨し、疾病リスクを最小限にしている。感染症リスクに備える研修・教育も充実している。
(出典:住友商事株式会社 HPより)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.インフルエンザの予防接種を社内で実施している
2.インフルエンザの予防接種の費用を補助している(一部負担の場合を含む)
8.海外渡航者に対する予防接種や予防内服等の準備を行っている
9.海外渡航者に対する教育の実施や緊急搬送体制の整備を行っている
10.感染症のワクチンに対する従業員のリテラシーを高めるための教育・研修を行っている
(2)中小企業が今すぐ始めたい取り組み
先ほどご紹介した健康経営優良法人認定のチェック項目に合わせて、どんなことができるか見てみましょう。
1.インフルエンザの予防接種を社内で実施している
→医療機関と提携し、事業所内での集団接種会を実施しましょう。
2.インフルエンザの予防接種の費用を補助している(一部負担の場合を含む)
→接種費用の一部(例:2,000円まで)を会社が補助する。領収書提出で精算する方式なら運用しやすい。
3.麻しん、風しん等の予防接種の社内実施または補助を行っている
→希望者に抗体検査・予防接種の費用補助を行う。
特に妊娠希望者や若手社員に優先的な案内:妊娠中の風疹感染は胎児に深刻な影響を与える場合がある。
4.予防接種を受ける際に就業時間認定や有給の特別休暇付与等の制度的配慮を行っている(家族が予防接種を受ける際の付き添いを含む)
→接種当日は勤務時間中に外出可、副反応が出た場合は翌日までの特別有給制度を用意する。
5.感染症を発症した者(家族が発症した場合を含む)への有給の特別休暇付与による感染拡大予防を行っている
→発熱・感染が疑われる場合は出勤停止+特休扱いにするなど、「無理して出勤しない」ルールを明文化しておく。
また、家族が感染した場合も在宅勤務推奨または特休対応とする。
6.健康診断時に麻しん・風しん等の感染症抗体検査を実施している
→希望者のみオプション検査として抗体検査を案内する。医療機関に相談して、健診パッケージに加えてもらいましょう。
7.感染拡大時の事業継続計画を策定している
→「○人以上の感染が出たら在宅勤務を推奨」など、簡易事業継続計画を作成する。社内で共有・掲示することが大切。
8.海外渡航者に対する予防接種や予防内服等の準備を行っている
→海外出張や駐在時に、会社が予防接種費用を補助する。
9.海外渡航者に対する教育の実施や緊急搬送体制の整備を行っている
→派遣前に感染症対策の案内資料やチェックリストを配布する。緊急時の連絡先リスト(現地大使館・保険窓口)を準備しておく。
10.感染症のワクチンに対する従業員のリテラシーを高めるための教育・研修を行っている
→感染症予防に関する社内ミニ研修や動画視聴をしたり、社内掲示板・メール・LINEで正しい予防情報を定期発信しましょう。
11.事業場において換気設備の整備や換気ルールの導入を行うなど、職場の環境整備を行っている
→1時間に1回の換気をルール化し、社内に掲示する。空気清浄機の導入もおすすめです。エアコンと窓の併用で“見える換気”を意識しましょう。
12.特に行っていない ⇒評価項目不適合
健康経営の感染症予防は、制度の有無よりも“やっている事実と工夫”が評価されます。

書類やルールをきちんと整え、社員に共有していることがポイント!
(3)申請にあたり保存しておくべきデータ
健康経営優良法人の申請に際しては、申請内容の正確性と信頼性を確保するため、申請期間の最終日から2年間、申請内容を裏付ける資料の保存が義務付けられています。
「感染症予防に関する取り組み」では、下記のデータが求められる場合があるので、用意しておきましょう。
感染症予防に関する社内ルール・制度が明文化された資料
もしくは、
予防接種の実施に際して費用補助を行ったことを確認できる自社宛の請求書 等
感染症予防の取り組みに関しては、申請内容の裏付けとなる資料を2年間保存しておく必要があります。
◎ インフルエンザ予防接種の案内文書や実施記録、当日の写真
◎ 接種費用補助の制度内容や精算記録
◎ 麻しん・風しんなどの予防接種や抗体検査の実施履歴
◎ 接種時の勤務扱いや特別休暇制度の規定や申請書類
◎ 感染時の出勤停止や特別休暇の運用ルールと実績
◎ 感染症に関する社内研修資料やeラーニング記録
◎ 海外赴任者への健康診断・予防接種の案内と受講記録
◎ 職場の換気ルールや空気清浄機等の設備導入記録
◎ 感染症対応に関するBCP(事業継続計画)文書
これらの取り組みを「見える化」して記録・保管しておくことで、申請時の対応がスムーズになります。
データ類は、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた場合には1週間以内に対応しましょう。

感染症予防の取り組みは、制度や行動があっても証拠として残っていないと評価対象外になることもあるので、しっかりまとめておきましょう!
4. まとめ
今回の記事では、感染症予防の基本から、健康経営優良法人の認定に向けた具体的な対策までを幅広くご紹介しました。
◎ 感染症対策は企業規模に関係なく「やるか、やらないか」
◎ 発熱時の出勤停止ルールやワクチン支援などの社内ルール整備が基本
◎ 日常的な衛生管理(消毒・換気・レイアウト見直し)で予防を徹底
◎ ポスター・社内報・研修などで社員の意識を高めることが大切
◎ 感染症流行時の対応体制(在宅勤務、クラスター報告体制)も必須
◎ 取り組み内容は“記録に残す”ことで認定申請の評価対象に