【健康経営優良法人】保健指導・特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み

このブログは約5分で読めます。

健康診断、受けさせるだけで終わっていませんか?


高血圧や血糖値の異常を放置すれば、体調不良や離職につながるリスクも。


そんな“見逃し”を防ぐカギが「保健指導」です。

羊一さん
羊一さん

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。今回は、「保健指導」・「特定保健指導」について解説していきます。

1. 保健指導・特定保健指導とは?

保健指導や特定保健指導は、単なる制度対応にとどまらず、企業の人的資本への投資として非常に有効です。従業員の生活習慣改善をサポートすることで、将来的な医療費の抑制や業務パフォーマンスの向上に直結します。

「保健指導」と「特定保健指導」同じようなワードですが、この2つの違いについて見てみましょう。

保健指導

高血圧・血糖値・コレステロール値などが基準値を超えているなど、健康診断の結果に基づき、医師や保健師、看護師、管理栄養士などが行うサポートのことです。

生活習慣の改善を目的としてアドバイスや支援を行います。個別面談や電話、メール、継続的なフォローなど、形態はさまざまです。

こずえ
こずえ

私の夫も血圧が高いので、健康診断の後、フォローの電話がかかってきています。

特定保健指導

40~74歳の被保険者が対象で、「特定健康診査(いわゆるメタボ健診)」の結果に基づいて提供される指導です。

内臓脂肪型肥満に起因する生活習慣病の予防を目的としており、健康診断で「メタボリックシンドローム予備群」と判定された人に対して行います。積極的支援動機付け支援との2段階の支援があります

支援区分積極的支援動機付け支援
対象となる人リスクが高く、明確な生活改善が必要な人生活習慣の改善が必要な“予備群”
支援の目的実際に行動変容を促し、習慣化を目指す生活習慣を見直すきっかけづくり
支援の内容▶︎ 面談+継続的なサポート(3か月以上)
▶︎ メール、電話、アプリなどで複数回フォロー
▶︎ 面談や電話で1回、専門職がアドバイス
▶︎ その後は本人の自主的な取組に任せる

支援の区分は、「特定健康診査」の結果(腹囲・BMI・血圧・血糖・脂質・喫煙歴など)によって自動的に決まります。

積極的支援は、“実際に生活を変えたい”方に対して、数か月にわたって専門職が寄り添いながらサポートする取り組み。

一方で、動機付け支援は、“健康への意識を持ち始めた方に向けて、生活習慣を見直すきっかけを与えるアドバイスです。

羊一さん
羊一さん

企業は、対象者が「支援を受けやすい環境」を整えるだけでも、健康経営の評価につながります。

〈〈 保健指導と特定保健指導の違い 〉〉

項目保健指導特定保健指導
対象健診で要指導となった人メタボ判定の出た40~74歳
実施者企業(産業医・保健師・健診機関・健康保険組合)健康保険組合・協会けんぽ等
法的根拠特になし(企業の裁量)高齢者医療確保法に基づく制度
内容食事・運動・生活習慣のアドバイス、面談など動機付け支援・積極的支援(個別計画あり)
実施タイミング健診後すぐ/企業のタイミングで年1回の特定健診後

(1)保健指導と特定保健指導のメリット

忙しい日々のなか、つい後回しにしがちな健康管理。

保健指導、特定保健指導には、大きなメリットがあります。

◎社員にとってのメリット

▶︎ 生活習慣病の予防・改善につながる

 → 血圧や血糖値、コレステロールの数値改善が期待できる。

▶︎ 将来の医療費・通院のリスクを減らせる
 → 重症化を防ぐことで、医療機関にかかる頻度も減る。

▶︎ 日々の生活習慣を見直すきっかけに
 → 食事や運動、睡眠の質など、健康意識が高まる。

◎企業にとってのメリット

▶︎ 体調不良によるパフォーマンス低下を防げる
 → 「なんとなく調子が悪い」を減らし、生産性アップにつながる。

▶︎ 休職や離職のリスクを減らせる
 → 社員の健康が守られることで、長期離脱を未然に防げる。

▶︎ 「健康経営優良法人」認定にも有利に
 → 特定保健指導の実施体制は、評価項目にも含まれている。

羊一さん
羊一さん

特定保健指導を受けた人は、翌年度以降の年間医療費減少が期待できます!

(2)中小企業で保健指導が取り組みやすい理由

「人手も予算も限られている中小企業で、本当に保健指導なんてできるの?」

実は、小さな工夫ひとつで、大きな効果が生まれます。運動や社食の導入はハードルが高くても、保健指導は…

①実施主体に制限がない

保健指導は、企業自身でも健康保険組合でも、どちらが行ってもOKです。必ずしも産業医や社内保健師を雇う必要はありません。

健康保険組合のサポートが活用できる

健保組合によっては、健診結果に基づく電話支援・面談・資料提供・セミナーなどを無料で実施しています。企業はそれを「活用するだけ」で十分な保健指導につながります。

③小さな声かけやフォローでも評価対象に

健診後に「結果はどうでしたか?」と声をかけたり、受診を勧めたりするだけでも「保健指導に関する取り組み」として評価されます。

健康経営優良法人の認定にもつながる

健康経営の評価項目として、「保健指導を行っているか」「機会を提供しているか」が含まれています。小さな取り組みでも“加点対象”になりやすく、中小企業にとって取り組みやすい分野です。

2. 健康経営優良法人認定制度申請時のチェック項目

経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。

1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している(例:健診結果の返却時に特定保健指導の案内を同封する等)

2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している

3.管理職に対して、特定保健指導の重要性を伝えた上で、業務上の配慮をするよう指導を行っている

4.特定保健指導実施時間の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている

5.社内にて特定保健指導実施場所を提供している

6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している

7.事業場や対象者の繁閑を保険者と共有し、対象者が特定保健指導を利用しやすい環境を作っている(例:健康診断と同日での初回面談の実施、勤務シフトの調整等)

8.事業場からオンラインで特定保健指導を受けられる環境を整備している

9.特に行っていない

(1)保健指導・特定保健指導実施 参考企業例

株式会社タニタ

◎産業医による健康診断結果ハイリスク者との面接・生活習慣改善指導(該当項目:5・6)

 


◎アプリを使った生活習慣病予防支援と生活習慣改善支援(該当項目:8)

(参考:株式会社タニタHP より)

(2)今からできることリスト

羊一さん
羊一さん

ここからは健康経営優良法人の申請時に役立つ『今からできること』を具体的にご紹介します!

1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している(例:健診結果の返却時に特定保健指導の案内を同封する等)

▶︎健診結果の返却時に、協会けんぽの案内資料を一緒に渡しましょう。また社内掲示板や社内LINE、朝礼で口頭周知も効果的です。

2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している

▶︎総務・人事担当が窓口として「相談できる人」として明示する。外部の産業保健師と連携するのも◎

3.管理職に対して、特定保健指導の重要性を伝えた上で、業務上の配慮をするよう指導を行っている

▶︎管理職向けに「対象者に無理をさせない」などの一言レクチャーを実施する。研修資料を簡単に配布してみましょう。

4.特定保健指導実施時間の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている

▶︎面談や受診にかかる時間を「就業扱い」とするルールをつくる。難しければ「1時間の時短OK」などでも◎

5.社内にて特定保健指導実施場所を提供している

▶︎会議室や応接室を10〜15分程度の面談場所として案内したり、オンライン面談用にPCや静かなスペースを確保するのも有効です。

6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している

▶︎健診後のフォロー面談時に、特定保健指導の話も一緒に行いましょう。労働安全衛生委員会での一括確認なども活用するのもおすすめです。

7.事業場や対象者の繁閑を保険者と共有し、対象者が特定保健指導を利用しやすい環境を作っている(例:健康診断と同日での初回面談の実施、勤務シフトの調整等)

▶︎健診と同日に初回面談を設定するよう協会けんぽに依頼してみる。

8.事業場からオンラインで特定保健指導を受けられる環境を整備している

▶︎会社のノートPCとWi-Fiでオンライン面談を可能にしたり、従業員のスマホ活用でも実施できるようサポートしましょう。

(3)申請にあたり保存しておくべきデータ

健康経営優良法人の申請に際しては、申請内容の正確性と信頼性を確保するため、申請期間の最終日から2年間、申請内容を裏付ける資料の保存が義務付けられています。

「保健指導・特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み」では、下記のデータが求められる場合があるので、用意しておきましょう。 

特定保健指導実施にあたり、就業時間認定等のルール・制度が明文化された資料

もしくは

保険者に実施場所を提供していることが確認できる特定保健指導の案内・メール 等

また、健康診断の結果を踏まえ、特に健康の保持に努める必要があると認められる従業員に対し、医師、保健師、地域産業保健センター等による保健指導(特定保健指導を除く)を行なった場合は、

保健指導を実施したことを示す医療機関・健診センターからの請求書 等

担当者は、しっかり資料をまとめておきましょう。請求書は、電子ファイルでの保管も可能です。

データ類は、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた場合には1週間以内に対応しましょう。

3. まとめ

◎ 健康診断は「受けるだけ」で終わらせないことが大切
 ▶︎ 保健指導=生活習慣の改善支援(健診後すぐ実施可)
 ▶︎ 特定保健指導=40〜74歳が対象。メタボ予防に特化
◎ 中小企業でも産業医なしで導入しやすい制度
◎ 協会けんぽの無料サポートを活用すれば費用負担なし
◎ 健康経営優良法人認定にもつながりやすい


「小さな声かけ」でも評価される。まずはやってみよう!