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健康診断「受けさせるだけ」で終わっていませんか?
高血圧、血糖値、コレステロールの異常。
“体からのサイン”を見過ごしていませんか?
放置すれば、突然の体調不良や休職・退職につながることも。とくに中小企業では、ひとりの不調が全体の業務に大きく響きます。
だからこそ、注目したいのが「保健指導」
健康診断の結果を見たあと、どう行動するかがカギです。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。
実はこの保健指導、産業医がいない会社でも、外部の力を借りて始めることができます。
今回は、「保健指導」・「特定保健指導」について解説していきます。
保健指導や特定保健指導は、単なる制度対応にとどまらず、企業の人的資本への投資として非常に有効です。従業員の生活習慣改善をサポートすることで、将来的な医療費の抑制や業務パフォーマンスの向上に直結します。

「保健指導」と「特定保健指導」同じようなワードですが、この2つの違いについて見てみましょう。
保健指導
高血圧・血糖値・コレステロール値などが基準値を超えているなど、健康診断の結果に基づき、医師や保健師、看護師、管理栄養士などが行うサポートのことです。
生活習慣の改善を目的としてアドバイスや支援を行います。個別面談や電話、メール、継続的なフォローなど、形態はさまざまです。

私の夫も血圧が高いので、健康診断の後、フォローの電話がかかってきています。
特定保健指導
40~74歳の被保険者が対象で、「特定健康診査(いわゆるメタボ健診)」の結果に基づいて提供される指導です。
内臓脂肪型肥満に起因する生活習慣病の予防を目的としており、健康診断で「メタボリックシンドローム予備群」と判定された人に対して行います。「積極的支援」と「動機付け支援」との2段階の支援があります
支援区分 | 対象となる人 | 支援の目的 | 支援の内容 |
積極的支援 | リスクが高く、明確な生活改善が必要な人 | 実際に行動変容を促し、習慣化を目指す | ▶︎ 面談+継続的なサポート(3か月以上) ▶︎ メール、電話、アプリなどで複数回フォロー |
動機付け支援 | 生活習慣の改善が必要な“予備群” | 生活習慣を見直すきっかけづくり | ▶︎ 面談や電話で1回、専門職がアドバイス ▶︎ その後は本人の自主的な取組に任せる |

支援の区分は、「特定健康診査」の結果(腹囲・BMI・血圧・血糖・脂質・喫煙歴など)によって自動的に決まります。
「積極的支援」は、“実際に生活を変えたい”方に対して、数か月にわたって専門職が寄り添いながらサポートする取り組み。
一方で、「動機付け支援」は、“健康への意識を持ち始めた方”に向けて、生活習慣を見直すきっかけを与えるアドバイスです。

企業は、対象者が「支援を受けやすい環境」を整えるだけでも、健康経営の評価につながります。
〈〈 保健指導と特定保健指導の違い 〉〉
項目 | 保健指導 | 特定保健指導 |
対象 | 健診で要指導となった人 | メタボ判定の出た40~74歳 |
実施者 | 企業(産業医・保健師・健診機関・健康保険組合) | 健康保険組合・協会けんぽ等 |
法的根拠 | 特になし(企業の裁量) | 高齢者医療確保法に基づく制度 |
内容 | 食事・運動・生活習慣のアドバイス、面談など | 動機付け支援・積極的支援(個別計画あり) |
実施タイミング | 健診後すぐ/企業のタイミングで | 年1回の特定健診後 |
忙しい日々のなか、つい後回しにしがちな健康管理。
保健指導、特定保健指導には、大きなメリットがあります。
◎社員にとってのメリット
▶︎ 生活習慣病の予防・改善につながる
→ 血圧や血糖値、コレステロールの数値改善が期待できる。
▶︎ 将来の医療費・通院のリスクを減らせる
→ 重症化を防ぐことで、医療機関にかかる頻度も減る。
▶︎ 日々の生活習慣を見直すきっかけに
→ 食事や運動、睡眠の質など、健康意識が高まる。
◎企業にとってのメリット
▶︎ 体調不良によるパフォーマンス低下を防げる
→ 「なんとなく調子が悪い」を減らし、生産性アップにつながる。
▶︎ 休職や離職のリスクを減らせる
→ 社員の健康が守られることで、長期離脱を未然に防げる。
▶︎ 「健康経営優良法人」認定にも有利に
→ 特定保健指導の実施体制は、評価項目にも含まれている。


特定保健指導を受けた人は、翌年度以降の年間医療費減少が期待できます!
「人手も予算も限られている中小企業で、本当に保健指導なんてできるの?」
実は、小さな工夫ひとつで、大きな効果が生まれます。
運動や社食の導入はハードルが高くても、保健指導は…
①実施主体に制限がない
保健指導は、企業自身でも健康保険組合でも、どちらが行ってもOKです。必ずしも産業医や社内保健師を雇う必要はありません。
②健康保険組合のサポートが活用できる
健保組合によっては、健診結果に基づく電話支援・面談・資料提供・セミナーなどを無料で実施しています。企業はそれを「活用するだけ」で十分な保健指導につながります。
③小さな声かけやフォローでも評価対象に
健診後に「結果はどうでしたか?」と声をかけたり、受診を勧めたりするだけでも「保健指導に関する取り組み」として評価されます。
④健康経営優良法人の認定にもつながる
健康経営の評価項目として、「保健指導を行っているか」「機会を提供しているか」が含まれています。小さな取り組みでも“加点対象”になりやすく、中小企業にとって取り組みやすい分野です。
経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。
1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している(例:健診結果の返却時に特定保健指導の案内を同封する等)
2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している
3.管理職に対して、特定保健指導の重要性を伝えた上で、業務上の配慮をするよう指導を行っている
4.特定保健指導実施時間の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
5.社内にて特定保健指導実施場所を提供している
6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している
7.事業場や対象者の繁閑を保険者と共有し、対象者が特定保健指導を利用しやすい環境を作っている(例:健康診断と同日での初回面談の実施、勤務シフトの調整等)
8.事業場からオンラインで特定保健指導を受けられる環境を整備している
9.特に行っていない
株式会社タニタ
2008年より、通信機能付きの健康計測機器を活用し、社員の健康状態を「見える化」する「タニタ健康プログラム」を開始。社員同士の歩数を競うイベントや、体組成の定期測定を通じて、健康意識の向上を図っている。
健康保険組合と連携し、特定保健指導の受診を推奨。社員の健康診断結果を基に、個別の指導や支援を行っている。
(出典:株式会社タニタHP より)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している
2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している
5.社内にて特定保健指導実施場所を提供している
6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している
三井住友海上火災保険株式会社
全国の支店や営業所において、産業医や保健師による面談やオンライン指導を実施。特定保健指導の対象者には、健診結果を基にした個別の支援を行っている。
健診結果を分析し、リスクの高い社員には早期の受診勧奨やフォローアップを実施。特定保健指導の実施率向上を目指している。
(出典:三井住友海上健康保健組合 より)
健康経営優良認定法人申請時のチェック項目に当てはまるもの
1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している(例:健診結果の返却時に特定保健指導の案内を同封する等)
2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している
3.管理職に対して、特定保健指導の重要性を伝えた上で、業務上の配慮をするよう指導を行っている
4.特定保健指導実施時間の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
7.事業場や対象者の繁閑を保険者と共有し、対象者が特定保健指導を利用しやすい環境を作っている(例:健康診断と同日での初回面談の実施、勤務シフトの調整等)
8.事業場からオンラインで特定保健指導を受けられる環境を整備している
先ほどご紹介した健康経営優良法人認定のチェック項目。保健指導・特定保健指導を実施することにより、認定要件を満たすことができます。

保健指導・特定保健指導は、「健康改善」と「経営効率」の両方を高める戦略的な仕組みです。
チェック項目に対して、どんなことができるかご紹介します。
1.事業主側から対象の従業員に特定保健指導の案内を周知している(例:健診結果の返却時に特定保健指導の案内を同封する等)
→健診結果の返却時に、協会けんぽの案内資料を一緒に渡しましょう。また社内掲示板や社内LINE、朝礼で口頭周知も効果的です。
2.特定保健指導実施の支援を行う担当者を設置している
→総務・人事担当が窓口として「相談できる人」として明示する。外部の産業保健師と連携するのも◎
3.管理職に対して、特定保健指導の重要性を伝えた上で、業務上の配慮をするよう指導を行っている
→管理職向けに「対象者に無理をさせない」などの一言レクチャーを実施する。研修資料を簡単に配布してみましょう。
4.特定保健指導実施時間の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
→面談や受診にかかる時間を「就業扱い」とするルールをつくる。難しければ「1時間の時短OK」などでも◎
5.社内にて特定保健指導実施場所を提供している
→会議室や応接室を10〜15分程度の面談場所として案内したり、オンライン面談用にPCや静かなスペースを確保するのも有効です。
6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している
→健診後のフォロー面談時に、特定保健指導の話も一緒に行いましょう。労働安全衛生委員会での一括確認なども活用するのもおすすめです。
7.事業場や対象者の繁閑を保険者と共有し、対象者が特定保健指導を利用しやすい環境を作っている(例:健康診断と同日での初回面談の実施、勤務シフトの調整等)
→健診と同日に初回面談を設定するよう協会けんぽに依頼してみる。
8.事業場からオンラインで特定保健指導を受けられる環境を整備している
→会社のノートPCとWi-Fiでオンライン面談を可能にしたり、従業員のスマホ活用でも実施できるようサポートしましょう。
◎ 健康診断は「受けるだけ」で終わらせないことが大切
▶︎ 保健指導=生活習慣の改善支援(健診後すぐ実施可)
▶︎ 特定保健指導=40〜74歳が対象。メタボ予防に特化
◎ 中小企業でも産業医なしで導入しやすい制度
◎ 協会けんぽの無料サポートを活用すれば費用負担なし
◎ 健康経営優良法人認定にもつながりやすい
「小さな声かけ」でも評価される。まずはやってみよう!