【健康経営優良法人】40歳以上の従業員の健診データの提供とは?

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『40歳以上の従業員の健診データの提供』

と言われても、正直ピンとこない…。そんな方が多いと思います。

しかし、健康経営優良法人を目指す企業にとって、この『40歳以上の従業員の健診データの提供』は必須項目です。

「なぜ40歳以上?」

「どうやって提出するの?」

「個人情報は大丈夫?」

など、疑問や不安を抱える方も多いはず。

羊一さん
羊一さん

Sailing Dayの羊一です。

今回は健診データ提供の意味や実際の対応方法をわかりやすく解説します。

1. 健康経営優良法人の認定要件を確認しよう

「健康経営優良法人認定制度」は経済産業省が健康経営の取り組みをする企業を応援するために、2016年に作られた評価制度です。

認定要件の必須項目2.組織体制に、40歳以上の従業員の健診データの提供があります。

(参考:ACTION健康経営)

羊一さん
羊一さん

経済産業省が健康経営をしている企業を応援しているんですね。

そもそも、健康経営が企業に注目されるようになったのはどうしてなのか、詳しく見ていきましょう!

(1)健康経営が企業に注目される背景

経営のプロたちが「健康経営はいますぐやるべきだ」と口をそろえる理由には、時代の流れや企業環境の変化があります。

健康経営の導入が広がっている背景を見ていきましょう。

①働く世代の人口減少と従業員の高齢化

少子化が進むなかで、生産年齢人口(15〜64歳の働く世代の人口)は年々減少しています。
一方で、企業の中では従業員の高齢化も進んでいて、病気や体調不良によって貴重な人材が継続して働けなくなるリスクが高まっています。

②深刻な人手不足と人材確保の競争

働く世代の減少により、あらゆる業界で人手不足が当たり前になっています。
中でも中小企業では、限られた人材をいかに確保し、長く定着してもらうかが経営の大きな課題。
従業員が「ここで働き続けたい」と感じる職場環境づくりは、企業の採用力や定着率を左右する重要なポイントになっています。

③医療費の増加と企業の社会保険料負担

高齢化が進む日本では、医療費の増加が社会全体の問題となっています。
この影響を受け、企業が負担する社会保険料も年々増加傾向にあり、「健康を守ることが、経費のコントロールにもつながる」という考えが広がり始めています。

羊一さん
羊一さん

こうした背景の中で、「従業員がいきいきと、長く働ける環境づくり」は、今や経営戦略の一部と捉えられるようになりました。
健康経営は、人材確保と企業の持続性を両立する取り組みとして、多くの経営者から注目を集めていますよ。

(2)認定企業が得られるメリット

健康経営優良法人に認定されると、いろいろなメリットがあります。

①社会的な信頼が高まる
国の制度に基づく認定なので、「社員を大切にしている企業」として社外からの信頼がアップする。自社HPやチラシ・名刺等に認定ロゴマークを掲載できる。

②採用で有利になる
「健康経営に力を入れている会社」というイメージは、求職者にとって安心材料に。特に若い世代や子育て世代の関心が高いです。また、ハローワークインターネットサービスで「健康経営優良法人」の認定ロゴマークの表記ができるようになった。

③社員の健康意識が上がる
健康診断の受診率が高まったり、生活習慣を見直す社員が増えたりと、会社全体の健康レベルがアップする。

④補助金や融資で優遇されることがある
 一部の自治体や金融機関では、認定企業向けの補助金や融資メニューがある(※地域による)。

⑤離職率の低下や生産性向上が期待できる

健康への取り組みが働きやすさにつながり、社員の定着率が改善。結果として業績にも良い影響が出ることも。

羊一さん
羊一さん

こうしたメリットは、会社にとっても社員にとっても嬉しいですね。

ここからは、本題の『40歳以上の従業員の健診データの提供』について見ていきましょう!

2. 40歳以上の従業員の健診データの提供とは?

『(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供』

健康経営優良法人の認定をもらうためにやらなければいけない必須項目。

しかしこの仕組みは、あまり知られていないのが現実です。

なぜ「40歳以上」なのか、どんなデータを求められるのか、そして法律的にはどうなのかを、わかりやすく整理してみました。

(1)なぜ40歳以上が対象なのか?

この「40歳以上」という基準には、ちゃんとした理由があります。

日本では、40歳になると「特定健康診査(特定健診)」という健康チェックを受ける対象になります。これは生活習慣病の予防を目的とした国の制度で、40歳から74歳までの人が対象です。

この年代は、血圧やコレステロール、血糖値などに変化が出やすく、将来的に病気につながるリスクが高くなる時期でもあります。もちろん他の年代の健康状態も大切ですが、特に40歳以上の健康状態を早めに把握して対策をとることが、企業にも求められているということです。

羊一さん
羊一さん

つまり、40歳以上のデータを提出することは、企業が社員の健康をしっかり見守っている証拠。だから健康経営優良法人の認定で必須項目になっているんですね!

(2)提供が求められる健診データの具体的な内容

では、実際にどんな健診データが対象になるのでしょうか?加入者が多い全国健康保険協会(協会けんぽ)を例に見ていきましょう。

提出が求められるのは、主に特定健診の結果です。

提供する健診項目は?

1. 基本データ

保険者番号、健康保険記号・番号、氏名(カナ)、生年月日、性別、住所、健診機関名(コード番号)、健診受診日

2. 健診項目等

身長、体重、BMI、腹囲、血圧、空腹時中性脂肪(やむを得ず空腹時以外に採血を行った場合は随時中性脂肪でも可)、HDLコレステロール、LDLコレステロール(空腹時中性脂肪が400mg/dl以上または食後採血の場合Non-HDLコレステロールでも可)、空腹時血糖又はHbA1c(やむを得ず空腹時以外に採血 を行い、HbA1c(NGSP値)を測定しない場合は食直後(食事開始時から3.5時間未満)を除き随時血糖でも可)、肝機能(AST、ALT、γ-GT)、尿検査(尿糖、尿たんぱく)、メタボリックシンドローム判定、医師の診断(判定)、医師名

3. 問診票

服薬歴、喫煙歴、既往歴、自覚症状・他覚症状の有無

※健診結果の階層化を行い、当該加入者の方に対して特定保健指導を実施するためには、健診診項目以外に服薬情報・喫煙歴の情報が必要となります。また、現病歴はデータに含みません。

※階層化とは、特定健康診査の結果からメタボリックシンドロームの程度とリスク要因の数に照らし合わせ、リスクの高さや年齢に応じてレベル別に保健指導を行うための対象者の選定を行うことです。

※上記 2.健診項目等 について、一部でも検査ができなかった項目がある場合は対象外になります。

(出典:全国協会けんぽ埼玉支部より)

羊一さん
羊一さん

提出先は、企業が加入している協会けんぽなどになります。

個人情報など大丈夫なのか?

法律で決められているのかも気になりますね。

健診結果を提供して個人情報は問題ありませんか?

事業主様が協会けんぽに対して健診結果を提供していただくことは、「高齢者の医療の確保に関する法律」、「健康保険法」に規定されていますので、事業主様が責任を問われることはございません。また、ご提供いただきました健診結果は、「個人情報の保護に関する法律」、「全国健康保険協会個人情報保護規程」その他の関係法律に基づき、確実な漏洩防止策を講じて適切な管理を行います。 
 なお、誤解によるトラブルを防ぐために、対象となる従業員の皆様には健診結果を協会けんぽへ提供することを、あらかじめお知らせください。

(出典:全国協会けんぽ埼玉支部より)

羊一さん
羊一さん

つまり、あらかじめ対象となる従業員に健診結果を協会けんぽへ提供することを知らせておけば「高齢者の医療の確保に関する法律」「健康保険法」に規定されているので問題ないということですね!

3. 健診データ提供の同意書(提供依頼書)

羊一さん
羊一さん

実際にSailing Dayでも、『(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供』に当てはまる、協会けんぽに提出依頼書を提出しています。

協会けんぽは所定の提出依頼書に記入して提出するだけでオッケーです。

その他の保険組合や共済組合などは、保険者に確認をしましょう。

(出典:全国協会けんぽ埼玉支部より)

(出典:全国協会けんぽ埼玉支部より)

4. 健診データを提供する流れ

羊一さん
羊一さん

協会けんぽの健診結果の提供方法は2パターンあります。

パターン①

健診機関から協会けんぽへ直接提供する場合

事業主様が「提供依頼書」を協会けんぽに提出することで、協会けんぽと契約を締結している健診機関から直接データが提供されます。この方法では、事業主様の手間が少なく、スムーズに手続きが進みます。

この時にも、対象となる従業員の皆様には健診結果を協会けんぽへ提供することを、あらかじめ知らせておく必要があります。

パターン②

事業主様から協会けんぽへ直接提供する場合

契約を締結していない健診機関で受診された場合や、健診機関からのデータ提供が難しい場合は、事業主様が以下の方法で直接提供してください。

◎紙媒体での提出:健診結果票の写しに、受診者ご本人の「問診項目質問票」を添付し、協会けんぽへ郵送します。 

◎電子データでの提出:協会けんぽが提供する「事業者健診結果データチェックツール」を使用してCSV形式のデータを作成し、CD-RまたはDVD-Rに保存して提出します。 

なお、電子データでの提出には、事前に協会けんぽとの覚書の締結が必要です。 

羊一さん
羊一さん

40歳以上の従業員がいるいないに関わらず、協会けんぽに『提出依頼書』を提出して、対象となる従業員には健診結果を協会けんぽへ提供することをあらかじめお知らせておき、協会けんぽ(保険者)から求められた際に、健診データの提供をすれば、健康経営優良法人の『(求めに応じて)40歳以上の従業員の健診データの提供』項目クリアになります。

担当者さんは早めに提出しておきましょう!

5. まとめ

◎「40歳以上の従業員の健診データの提供」

▶︎健康経営優良法人の認定で必須の対応項目

◎認定を受けると

▶︎信頼性向上・採用力アップ・社員の健康意識向上・助成金や融資の優遇など多数のメリットがある

◎「40歳以上」が対象なのは

▶︎国が定めた特定健診制度の対象年齢だから(40~74歳)

◎データの提出先は

▶︎協会けんぽや健康保険組合などの保険者

◎健診データの提出

▶︎従業員本人に事前説明をし、協会けんぽに「提出依頼書」を提出することで、健診機関から直接データ提供できる

◎健診機関と契約していない場合

▶︎事業主が紙または電子データで提出する方法もある

◎健診データ提供は法律(高齢者医療確保法・健康保険法)にもとづいており、企業側の責任は問われない

◎協会けんぽに『提出依頼書』を提出しよう!

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