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健康診断で「再検査が必要」と通知されたのに、忙しさに追われて放置していませんか?
実は、再検査や精密検査を受けずに放置してしまう人は少なくありません。そこで、企業がしっかり従業員に伝えていくことが大切となります。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。
今日は健康経営における「受診勧奨の取り組み」について詳しく解説します。
1. 受診勧奨とは
健康経営優良法人における受診勧奨の取り組みは、従業員が健康診断や再検査・精密検査、がん検診などをしっかり受けられるように、企業が積極的にサポートする取り組みです。
ただ「健康診断を実施する」だけでは不十分で、その結果を受けて次に必要な行動につなげることが重視されています。
企業が取り組む受診勧奨には、主に次の2種類があります。
受診勧奨の取り組みを満たすにはどちらの項目も満たす必要があります。
①定期健康診断等の結果、再検査や精密検査が必要とされた従業員に対する受診を促すための取り組みまたは制度
再検査は通常の健診項目の再確認、精密検査はより詳しい専門的検査を指します。
②従業員に対するがん検診等の任意検診の受診を促す取り組みまたは制度
ここでは、 定期健康診断、保健指導、特定健診・特定保健指導、 女性の健康に特化している受診勧奨については該当しません。
(1)①定期健康診断等の結果、再検査や精密検査
【目的】
健康診断の結果を「受けっぱなし」にせず、必要な医療につなげること。病気の早期発見・早期治療によって重症化を防ぎ、従業員の健康と企業の生産性を守ることが狙いです。
【主な取り組み・制度の例】
①個別フォローアップ体制の整備
▶︎ 保健師や産業医が再検査対象者に個別で声かけを行う。
▶︎ 健診結果に「要再検査」「要精密検査」と出た人のリストをもとに、追跡管理を実施。
②再検査・精密検査の受診状況の確認
▶︎ 検査を受けたかどうかを一定期間後に確認。
▶︎ 未受診者にはリマインド連絡を実施。
③費用面のサポート
▶︎ 再検査費用の一部または全額を会社が負担。
▶︎ 医療機関と提携し、従業員割引や特別料金での受診制度を導入。
④就業時間内の受診容認・休暇制度
▶︎ 検査のための時間を勤務時間内で取得できるようにする。
▶︎ 特別休暇や有給休暇の取得を推奨・整備。
⑤社内周知と啓発活動
▶︎ 再検査の重要性を、社内ポータルや掲示板、メール等で継続的に発信。
▶︎ 上司への教育も行い、検査を受けやすい職場風土をつくる。

◎評価される再検査の受診率が高い
◎追跡管理の仕組みが明文化され、定期的に実施されている
◎費用や時間の負担を減らす工夫がある などが評価されるポイントになります!
(2)②従業員に対するがん検診等の任意検診の受診
【目的】
がんなどの重篤な病気を早期発見・早期治療することで、従業員の命を守り、仕事への影響を最小限にとどめる。働きながら治療を続けられる環境を整えるためにも、任意検診の受診率向上が重要です。
【主な取り組み・制度の例】
①がん検診等の実施・費用補助
▶︎ 胃がん・大腸がん・肺がんなどの検診を社内で実施、または医療機関での受診を案内。
▶︎ 検診費用の一部または全額を会社が負担。補助制度の存在を社内で明確に周知。
②就業時間内での受診容認・特別休暇の整備
▶︎ 任意検診の受診についても、勤務時間内での実施を許可。
③従業員への情報提供と動機づけ
▶︎ 社内ポータルや掲示板、メール等で、検診の必要性や検査内容をわかりやすく解説。
▶︎ 実際の受診者の声や体験談を紹介し、検診への心理的ハードルを下げる。
④対象者への個別案内
▶︎ 年齢や性別に応じた検診対象者をリストアップし、該当者に個別通知やリマインドを送付。
▶︎ 例えば「40歳以上の社員は年1回のがん検診を推奨」などの基準を設け、対象者に明確に伝える。
⑤受診率の把握と改善活動
▶︎ 任意検診の受診率を集計・分析し、必要に応じて改善施策を検討。
▶︎ 部署ごとや年齢層ごとの受診率を可視化し、部署単位での促進策をとる企業も。
2. 健康経営優良認定法人申請時のチェック項目
経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。
①定期健康診断等の結果、再検査や精密検査が必要とされた従業員に対する受診を促すための取り組みまたは制度
1.対象者に対してメールや文書等により通知している
2.対象者に対して個別に声かけ・面談を行っている
3.対象者に対して個別に再検査や精密検査の日程を設定している
4.イントラネット、掲示板、朝礼、会議等で受診勧奨を行っている
5.受診時の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
6.費用補助を行っている
7.受診者に対するインセンティブ(費用補助以外)を付与している
8.受診が必要な従業員に対して受診報告を義務付けて、受診状況を把握している
9.特に行っていない ⇒特に取り組みがない場合、②も未実施であれば評価基準を満たしません。
②従業員に対するがん検診等の任意検診の受診を促す取り組みまたは制度
1.メールや文書等により受診勧奨を行っている
2.イントラネット、掲示板、朝礼、会議等で受診勧奨を行っている
3.受診時の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
4.費用補助を行っている
5.受診者に対するインセンティブ(費用補助以外)を付与している
6.定期健康診断にオプションとして付加できる医療機関と契約している
7.特に行っていない ⇒特に取り組みがない場合、①も未実施であれば評価基準を満たしません。
(1)受診勧奨の取り組み 参考企業例
①定期健康診断等の結果、再検査や精密検査が必要とされた従業員に対する受診を促すための取り組みまたは制度
株式会社ルネサンス
健康づくりを通じてお客様の生きがい創りに取り組むためには従業員が「心身共に健康のプロフェッショナル」であることを会社として求め、自らの健康を維持向上させている。
◎健診結果返却と併せ、CHO(社長)名による受診勧奨通知の同封(該当項目:1)
◎完了報告のない従業員に対し、定期的な個別フォロー実施(該当項目:2)
◎健康診断内容等、健康データが即時反映されるクラウド型健康管理システムを導入。
定量的・多角的なデータを基に即時、健康管理が可能である。(該当項目:8)
◎事後措置の対応が必要な社員に対し、社員会からの受診費用の支援(1万円/年度)している。(該当項目:6)
社長名で赤い紙による受診勧奨通知を実施したことで受診行動が促進され、再受診完了報告書の提出率は2021年度85.6%から2022年度87.2%に向上。
さらに、システム閲覧権限を管理職に付与し、99.0%がデータに基づいた迅速な対応を実施。個別フォロー体制の強化と費用支援制度の活用により、「受診のハードルが下がった」「促しやすい」といった現場の声も得られている。
(参考:健康経営先進企業事例集2024 より)

このように、「トップの関与」「見える化」「フォロー体制」「費用支援」がそろうことで、再受診の実行率が着実に上がっている好例です。
②従業員に対するがん検診等の任意検診の受診を促す取り組みまたは制度
社会医療法人 ペガサス 馬場記念病院
全従業員対象の定期健診および任意でのがん検診を実施や医師・管理栄養士による個別面談・受診勧奨を行っている。
◎勤務時間内での検診受診が可能(該当項目:3)
◎がん検診を含む任意検診費用の補助を実施している。(該当項目:4)
(参考:「職場で健活10」対象 より)

任意のがん検診を受けやすい環境整備と、専門職による丁寧なフォローを実践。健康診断の結果から必要な検査へスムーズにつなげる“受診勧奨の流れ”が構築されています。
(2)今からできることリスト

ここからは健康経営優良法人の申請時に役立つ『今からできること』を具体的にご紹介します!
①定期健康診断等の結果、再検査や精密検査が必要とされた従業員に対する受診を促すための取り組みまたは制度
1.対象者に対してメールや文書等により通知している
▶︎健診結果で再検査が必要な人に、会社から「再検査のお願い」文書やメールを送付する。
2.対象者に対して個別に声かけ・面談を行っている
▶︎上司や総務担当者が対象者に直接声をかけ、「再検査受けましたか?」とフォローする。
3.対象者に対して個別に再検査や精密検査の日程を設定している
▶︎小規模なら「この日に一緒に行こう」と日程を調整してみましょう。
4.イントラネット、掲示板、朝礼、会議等で受診勧奨を行っている
▶︎朝礼や社内掲示板で「再検査が大切です」と呼びかける。定期的に繰り返すことで意識づきます。
5.受診時の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
▶︎再検査に行く時間は勤務扱いにしましょう。
6.費用補助を行っている
▶︎再検査にかかった費用を最大〇円まで会社が補助するなど、小額でも助成する仕組みを導入する。
7.受診者に対するインセンティブ(費用補助以外)を付与している
▶︎検査受診者に「健康応援ポイント」など社内独自制度や商品券などの簡易報奨を用意しましょう。
8.受診が必要な従業員に対して受診報告を義務付けて、受診状況を把握している
▶︎「再検査に行ったら報告してね」と伝え、チェックリストで管理する。
②従業員に対するがん検診等の任意検診の受診を促す取り組みまたは制度
1.メールや文書等により受診勧奨を行っている
▶︎健保組合の案内を転送する。「がん検診のお知らせです」と一言添えると見てもらいやすい。
2.イントラネット、掲示板、朝礼、会議等で受診勧奨を行っている
▶︎年に1回でもいいので、「がん検診は受けましょう」と全体で呼びかける機会を設ける。
3.受診時の就業時間認定や有給の特別休暇付与を行っている
▶︎再検査に行く時間は勤務扱いにしましょう。
4.費用補助を行っている
▶︎再検査にかかった費用を最大〇円まで会社が補助するなど、小額でも助成する仕組みを導入する。
5.受診者に対するインセンティブ(費用補助以外)を付与している
▶︎検査受診者に「健康応援ポイント」など社内独自制度や商品券などの簡易報奨を用意しましょう。
6.定期健康診断にオプションとして付加できる医療機関と契約している
▶︎健診センターとの簡易契約や、指定病院で割引が受けられる提携を検討しましょう。

「声かけ」「就業時間対応」「費用補助」の3点を基本にすると取り組みやすいです。また書類や通知はテンプレート化しておくと負担を軽減しやすくなります。
(3)申請にあたり保存しておくべきデータ
健康経営優良法人の申請に際しては、申請内容の正確性と信頼性を確保するため、申請期間の最終日から2年間、申請内容を裏付ける資料の保存が義務付けられています。
「受診勧奨の取り組み」では、下記のデータが求められる場合があるので、用意しておきましょう。
再検査・精密検査対象者に対する受診勧奨の実施記録
もしくは
がん検診等の任意検診の受診を促す社内向けチラシ・メール等の記録 等
担当者は、しっかり資料をまとめておきましょう。
データ類は、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた場合には1週間以内に対応しましょう。
3. まとめ
◎「要再検査」は放置せず、次の行動へつなげる
▶︎健康診断の結果は“受けっぱなし”ではなく、医療機関への受診が大切
◎企業側の支援が従業員の受診行動を後押しする
▶︎個別フォローや受診リマインドが行動につながる
◎費用や時間の壁を下げる制度が有効
▶︎検査費補助・勤務時間内の受診・特別休暇制度などが効果的
◎社内での周知・啓発も重要な施策
▶︎イントラネットや掲示板、上司からの声かけで意識づけを
◎トップの関与と仕組み化が成功のカギ
▶︎社長名での通知や管理職の協力が再受診率を高める事例も