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「通勤時間、ただの移動で終わっていませんか?」
忙しい毎日の中で、運動の時間を取るのはなかなか難しいもの。
でも実は、“いつもの通勤”こそが健康づくりのチャンスです。

Sailing Dayの羊一です。
今回は「自転車通勤」や「徒歩通勤」についてどんな健康効果があるのか、そして企業がどのように導入・支援しているのかをわかりやすく紹介します。

1. 自転車通勤・徒歩通勤が注目される理由
社員の健康づくりと生産性の向上を同時に実現できる方法としていま多くの企業が注目しているのが「自転車通勤」と「徒歩通勤」です。
時間もお金もかけずに続けられ毎日の通勤そのものを“健康時間”に変えられるから。
「忙しくて運動する時間がない」という社員にも無理なく取り入れられることから健康経営の新しい選択肢として広がりを見せています。

通勤って、毎日の当たり前の時間ですよね。
でも実は、この“通勤のしかた”を少し変えるだけで健康にも仕事のパフォーマンスにも大きな違いが出るんです。次では、その根拠をデータで見ていきましょう。
(1)体を変えるたった10分の違い
スポーツ庁のデータでは、日本人の1日の平均歩数は男性6,984歩、女性6,029歩。
ここに+10分(約1,000歩)加えるだけで、生活習慣病の予防につながると言われています。
通勤を自転車や徒歩に変えれば、その“+10分”を自然に取り入れられるのです。
一方で、車や電車だけの通勤では身体をほとんど動かさず、肥満や生活習慣病のリスクが高まります。
実際、フィンランドの研究では「毎日45分以上のアクティブ通勤(徒歩・自転車)」を行う人は体内の炎症が減り心臓病やがんのリスクも減少することが明らかになっています。

こうして数字で見てみると「たった10分」「たった数千歩」の違いが数年後の健康に大きな差を生むことが分かりますね。では、運動不足が続くと実際にどんなリスクがあるのでしょうか?
次に「運動不足のマイナス効果」を見ていきましょう。
(2)運動不足のマイナス効果
現代の通勤では、多くの社員が満員電車や自動車に頼りがちで、通勤時間中はほとんど身体を動かしません。そうした「座りっぱなし」の通勤は、長期的に見ると体力低下や肥満、血糖値上昇を招きやすくなります。
スポーツ庁の調査でも、先述の通り1日歩数が+1,000歩(約10分)増えるだけで生活習慣病予防に大きく寄与することが分かっており、現状の平均歩数だけでは不十分と指摘されています。

実はこの“通勤時の運動不足”、放っておくと企業にとってもリスクになります。
次に、その長期的な影響を具体的に見ていきましょう。
(3)放置すると長期的に及ぶ影響

通勤時の運動不足を放置しておくと、社員の体力・集中力低下だけでなく病気による欠勤や医療コストの増加といった影響が会社にも跳ね返ります。
慢性的な肩こり・腰痛、睡眠の質の悪化、ストレス増大など心身両面に影響が広がります。
こうした不調が積み重なると病気による欠勤や医療コストの増加、生産性の低下といった形で企業にも負担が跳ね返ってくるのです。
厚生労働省の推計では、生活習慣病による労働損失は年間1兆円規模に上るとされ運動不足は“個人の問題”ではなく、“経営課題”として捉える時代に変わりつつあります。

つまり、通勤時間を健康づくりに活用できないまま過ごすと社員は将来的に生活習慣病リスクを抱え欠勤や生産性低下につながりかねないのです!
2. 自転車通勤・徒歩通勤が”企業”で注目される理由

「通勤=ただの移動時間」ではなく、「健康をつくる時間」として注目されています。
では、なぜ企業が“自転車通勤”や“徒歩通勤”を推進する動きが広がっているのか?数字と実例をもとに、その理由を見ていきましょう。
(1)数字で見る日本の通勤スタイルの現状

日本における通勤状況を数字で見ると、自転車・徒歩通勤の普及余地はまだ大きいことが分かります!
2010年時点の15歳以上の通勤通学生のうち徒歩・自転車だけで移動している人の割合は全国平均で約18.1%にとどまります。つまり約8割は車や公共交通機関に頼っていることになり、多くの人に運動不足の余地がある状況です。
また、先述の通り日本人の1日平均歩数は6,000~7,000歩程度であり、意識的に動かないと十分な運動量には届きません。このように、現状では多くの社員が通勤時にほとんど身体を動かせておらず健康増進の機会を逃しているといえます。

ここまで見てきたように、日本ではまだ多くの人が車や電車で通勤しています。
では、実際にどれくらいの人が“歩く・漕ぐ”通勤をしているのでしょうか?
通勤スタイルごとの割合と健康効果を、データで見てみましょう。
通勤スタイル | 割合・普及状況 | 運動量・健康効果 |
---|---|---|
🚴♂️ 自転車通勤 | 約10%前後(推計・国勢調査) | 軽い有酸素運動により脂肪燃焼や血流改善。 約30分の通勤で200〜300kcal消費。 |
🚶♀️ 徒歩通勤 | 約8%前後(推計・国勢調査) | +10分(約1,000歩)歩くだけで生活習慣病予防。 ストレス軽減・集中力アップにも効果。 |
🚗 車・電車通勤 | 約82%(全国平均・通勤通学者全体) | 運動量がほとんどなく、肥満・生活習慣病リスクが上昇。 |
健康維持の目安 | +約10分(約1,000歩) | 日常生活に取り入れることで生活習慣病リスクを低減。 |

データを見ると、車や電車通勤に比べて自転車・徒歩通勤は運動量が格段に多く健康効果が明確ですね。
そしてこの効果は、個人の健康にとどまらず企業全体の生産性や組織づくりにも広がっているんです。
次では、「自転車・徒歩通勤」がもたらす“企業と社員、双方にとってのメリット”を見ていきましょう!
(2)企業と社員に広がる効果
通勤を“運動時間”に変えることは、社員の体だけでなく心の健康や仕事のパフォーマンスにも良い影響を与えます。
朝の軽い運動で血流が促進されると、集中力や判断力が高まり仕事へのモチベーションが上がりやすくなります。
さらに、こうした効果は社員一人の変化にとどまりません。
職場全体に活気が生まれ、生産性の向上・メンタルヘルスの安定・離職防止といった好循環が期待できます。

つまり、自転車通勤や徒歩通勤は「個人の健康づくり」と「企業の健康経営」をつなぐ“架け橋”のような取り組みなのです。
では、実際に自転車通勤や徒歩通勤を取り入れている企業はどんな工夫をしているのでしょうか?次は、具体的な制度づくりやサポート体制を見ていきましょう。
3. 具体的な取り組み
自転車・徒歩通勤を一時的なブームで終わらせないためには、制度・意識・安全の3つの基盤をそろえることが大切です。
どれかひとつ欠けても、長くは続きません。
社員の「やってみたい」を「続けられる」に変えるには会社が“後押しする仕組み”を整えることが鍵になります。

通勤を“健康習慣”に変えるにはルールだけでも、やる気だけでも足りません。仕組み・文化・安心、この3つがそろってようやく根づくのです。
それぞれのポイントを見ていきましょう!
(1)制度・設備の整備
通勤を支える仕組みの基本は“環境づくり”。手当や駐輪場補助といった“制度の後押し”があれば行動を起こしやすくなります。
さらに、保険加入やヘルメット着用のルールを整えることで「安心して通える職場」という信頼感が生まれます。
ロッカーやシャワー室の設置、スニーカー通勤の容認など“無理なく続けられる環境”をつくることがポイントです。

環境を整えることって“行動のスイッチ”だと思うんです。
「できるかも」と感じた瞬間、人は自然と動き出しますからね。
(2)従業員への啓発・動機づけ
制度があっても、気持ちが動かなければ定着しません。
大切なのは、社員が「自分ごと」として楽しめる仕掛けを用意することです。
ウォーキングチャレンジや社内報での健康特集など、ゲーム感覚で取り組めるイベントが人気。
また、経営層から「自転車通勤を応援します!」というメッセージが発信されれば、会社全体に“健康を楽しむ空気”が広がります。

「やらされる」より「楽しむ」が好きです!
ワクワクできる仕掛けがあるとみんなの行動が長続きしますよね。
(3)安全対策と継続支援
長く続けてもらうには、安全と安心のサポートが欠かせません。
交通安全講習や安全マップの共有、個人賠償保険の加入など、企業ができるサポートは多岐にわたります。
また、歩数や走行距離をアプリで「見える化」すれば、達成感が得られモチベーション維持に効果的です。
ヘルメット購入補助などの小さな支援も、「続けやすい職場」という信頼につながります。

安心して通える環境があるだけで毎日の通勤が少し楽しみになります。
そんな職場がきっと長く愛されるんですよね!

ここまで見てくると、自転車・徒歩通勤を定着させるには会社全体で支える仕組みが欠かせないことがわかりますね。
では、実際にどんな企業がどんな工夫で取り組んでいるのか?次章では、具体的な企業事例を見ながらヒントを探っていきましょう!
4. 企業事例 自転車・徒歩通勤で広がる健康経営の輪

ここまで、自転車や徒歩通勤を続けるための「仕組みづくり」のポイントを見てきました。
では実際に、企業はどんな工夫でこの取り組みを形にしているのでしょうか?
ここからは社員の健康と働きやすさを両立させた実践企業の例を見ていきましょう。
(1)はてな株式会社
(京都府/IT企業/社員数 約100名)
「自転車通勤文化」を制度と環境で支える工夫
京都本社への移転をきっかけに自転車通勤を推進。
社員の約3割が自転車で通勤するなど、オフィスの設計段階から“走る社員”を前提にした職場づくりを行っています。
【施策】
① 自転車通勤手当制度
はてなでは、自転車通勤者に月額2万円の手当を支給。条件は自転車で通勤すること、という単純明快な制度として導入しています。
② 駐輪場とサポート設備の確保
オフィス付近に十分な駐輪場を自前で確保。雨天や防犯面を配慮して屋内・屋根付き施設も整備。設備費用は会社負担です。
また、ミストサウナ付きバスルームや洗面スペース、空気入れなども設置し、通勤後のリフレッシュができる環境を用意しています。
③ 服装自由化・通勤選択肢への対応
スニーカー通勤やカジュアルスタイルを認めフォーマルな服装に縛られない通勤スタイルを許可。
また、駐輪場の整備と合わせて自転車通勤という選択肢が日常になり得るような風土作りを行っています。
【成果】
◎自然な運動習慣の定着:社員が普段の通勤で体を動かすようになり健康意識が向上
◎通勤ストレス軽減:満員電車や交通の遅延を避けられる通勤の自由さが気持ちの余裕をもたらす
◎採用・ブランディング効果:自転車通勤推進を制度化している点が企業の先進性・働きやすさを訴求する材料に
◎社内環境の向上:設備と制度の両立により社員が「通勤を楽しむ」文化が育まれています
(参考: はてな広報ブログ「自転車通勤を促進するはてなの取り組み」より)

はてな株式会社のすごいところは、“制度”を超えて“文化”にまで育てたこと。自転車通勤を制度で支えるだけでなく、社員にとって快適な設備・ルール・選択肢まで整えている点が印象的です。制度が“使われる文化”になるにはこうした細かな配慮が大きな差を生みますね!
(2)コカ・コーラ ボトラーズジャパン
(東京都/飲料メーカー/従業員約15,000名)
社員の“安全・快適”を支える制度設計
「通勤をもっと健康的に、もっと安全に。」そんな想いから自転車通勤制度を新たに策定。
正社員だけでなくパート・アルバイトも対象とし誰もが安心して通勤を選べる仕組みを整えています。
【施策】
① 制度対象の拡大と柔軟性の導入
「新型コロナとの共生」を見据え、従来は正社員のみ対象だった自転車通勤制度をアルバイト・パート社員にも拡大。天候や交通事情といった理由で通勤手段を切り替えたい日のために公共交通機関との使い分けも認めるように制度を改定しています。
② 手当支給と駐輪場代負担
正社員には月額手当を支給、パート社員には距離に応じた日額手当を設けています。加えて、駐輪場設備がない拠点の社員には、駐輪場代相当額を会社が負担する制度も設けています。
③ 安全・健康面での規定強化
ヘルメットの着用を義務付け、保険加入(個人賠償責任保険など)を必須とすることで、安全対策を制度化しています。高速走行や長距離通勤時にはヘルメットの確実な着用を求め、低速・近距離でも着用を努力義務としています。
④ 服装ルールと通勤自由度の導入
同社では「Sawayaka Style」という服装規定を設け自転車通勤に適した軽快な服装でも出社可能な体制を整えています。服装の自由度を高め、通勤=運動の選択をしやすくする制度と位置付けられています。
【成果】
◎自転車通勤制度の利用対象拡大によりより多くの社員が制度を利用可能に
◎通勤手段の選択肢が増えたことで運動機会が向上
◎安全面を制度でカバーすることで安心して通勤できる環境が整備
◎健康経営の姿勢が内外に伝わり企業イメージの向上にも貢献
(参考:コカ・コーラ ボトラーズジャパン「新たな自転車通勤制度を策定」より)

この事例が示すポイントは、“誰もが選べる自転車通勤”制度を制度設計と安全規定の両面で整えていること。自由度と安心感の両立が、制度を定着させる大きなカギになります。社員が「安心して続けられる」仕組みこそ本当の健康経営です。
(3)中小企業と大企業の事例比較
項目 | はてな株式会社(中小企業) | コカ・コーラ ボトラーズジャパン(大企業) |
---|---|---|
独自の取り組み |
オフィス移転を機に自転車通勤を推進。社員の約3割が自転車通勤を選択。 屋内駐輪場・シャワー・ロッカーを完備。 |
自転車通勤制度を正社員に限らずパート・アルバイトにも拡大。 駐輪場代支給・保険加入義務化など安全面も整備。 |
働き方改革の工夫 |
服装自由・スニーカー通勤OKで“走る社員”が自然に増加。 社内で走行ルート共有=通勤が交流の場にも。 |
「Sawayaka Style」で服装の自由度を拡大。 公共交通機関との併用可など、柔軟な制度設計で誰もが利用可能に。 |
成果 |
◎ 健康意識の向上、ストレス軽減・集中力アップ ◎ 通勤が社内コミュニケーション活性化に寄与 ◎ “健康×交流”の文化として定着 |
◎ 制度利用者の拡大で運動機会が増加 ◎ 安全面を担保しつつ社員満足度が向上 ◎ 健康経営推進企業として社外評価も上昇 |
成功要因 |
◎ 社員が「楽しめる」仕組みを文化として定着 ◎ オフィス設計の段階から“健康前提”で構築 ◎ 小さな工夫の積み重ねで持続可能な通勤文化を形成 |
◎ 「誰もが使える」制度設計+安全規定の両立 ◎ 自由度と安心感の二輪で制度が自然に定着 ◎ 制度→習慣→企業文化へとスケール |

通勤って、毎日の“当たり前”の時間だからこそ、変えたときの効果は大きいんです!
「会社に行くだけ」で体が整い気分も前向きになる!そんな職場を増やしていくことが健康経営の本当の一歩かもしれませんね。
5. まとめ
◎ 通勤を“健康時間”に変える意味を理解する
▶︎ 「通勤=ただの移動」から「通勤=運動の時間」へ
▶︎ 毎日の習慣に無理なく運動を取り入れられる“健康経営の第一歩”
◎ 通勤スタイルの違いが生む健康格差
▶︎ 自転車・徒歩通勤者は平均+1,000歩で生活習慣病リスクが低下
▶︎ 車・電車通勤者は運動不足・肥満・集中力低下のリスクが上昇
◎ 放置すれば企業の経営課題にも
▶︎ 運動不足は生産性低下・欠勤増・医療コスト上昇の原因に
▶︎ 生活習慣病による労働損失は年間約1兆円(厚労省推計)
◎ 企業と社員に広がるプラスの効果
▶︎ 通勤中の軽運動で集中力・創造力が向上
▶︎ 社員の心身の健康が整い、離職防止・チーム活性化につながる
▶︎ 「社員の健康=会社の力」という好循環を生み出す
◎ 定着のカギは「制度+文化+安全」
▶︎ 手当・駐輪場・シャワー設備など“制度の後押し”
▶︎ 社員が楽しめるチャレンジ企画・トップメッセージで“文化化”
▶︎ 保険加入・ヘルメット着用など“安全と安心”の仕組みづくり
◎ 実際の成功事例に学ぶ
▶︎ はてな株式会社:設備・制度・服装自由化で“走る文化”を定着
▶︎ コカ・コーラ ボトラーズジャパン:全社員対象制度+安全規定で安心して選べる通勤制度を実現