【健康経営】中小企業の過重労働対策

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「気づけば毎日残業…」

「この働き方でいつまで続けられる?」


中小企業では人手不足や納期の重圧から長時間労働になりやすいもの。けれど放っておけば社員の健康を損ない労災や人材流出といったリスクが会社を直撃します。

羊一さん
羊一さん

こんにちは!Sailing Dayの羊一です。

この記事では過重労働対策として36協定の基本や労災のリスクをわかりやすく解説し今日からできるシンプルな改善策を紹介します。

1. 過重労働とは?

「過重労働」とは、一言でいうと “働きすぎで休む暇もない状態” のことです。

例えば、毎日フルマラソンを走っているのに翌日も休まず同じ距離を走らされるようなもの。体を回復させる時間がなく少しずつ疲労が積み重なりやがて倒れてしまいます。

仕事でも同じで、

①毎日残業が続いて睡眠がとれない

②出張や移動ばかりで休養がない

③休日出勤が重なってリセットできない

④仕事量や責任が重く、心身がすり減っていく

こうした働き方は短期間でも健康を大きく損ねます。

厚生労働省は、「月80時間を超える残業」を「過労死ライン」と呼んでいます。これは脳や心臓の病気のリスクが一気に高まる目安とされており過重労働の危険性を示す象徴的な数字です。

つまり過重労働とは、「がんばればなんとかなる」を超えて心身が悲鳴を上げている働き方のことなのです。

羊一さん
羊一さん

働きすぎは気づくのが遅れがちになります。「まだ大丈夫」を積み重ねて気づいたときには体も心も限界…なんてことにならないように誰にでも起こりうる身近なリスクだと考えましょう。

(1) 過重労働の問題点

過重労働は、社員本人の健康だけでなく会社経営にも深刻な影響を与えます。

【健康被害】
疲労が蓄積し睡眠不足や心身の不調につながります。長く続けばうつ病や心疾患の発症、最悪の場合は過労死に至ることもあります。

【事故・ミス】
疲労による集中力低下でヒューマンエラーが増加します。特に建設や製造の現場では労災事故につながる危険が高まります。

【経営リスク】
欠勤や早退が増え離職や採用難を招きます。生産性の低下だけでなく「働きすぎの会社」という評判が広まり企業イメージの悪化にもつながります。

(2) 36協定の基本

「36協定」という呼び方は、労働基準法の第36条に基づいて付けられています。
法律の36条に書かれている内容に沿って結ぶ協定なので「サブロク協定」と呼ばれています。

日本の法律では、1日8時間・週40時間が労働時間の上限とされています。
これを超えて残業や休日労働をさせるには、会社と従業員代表が「36協定(さぶろくきょうてい)」を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

協定を結ばずに残業させることは違法であり労基署からの指導や罰則の対象になります。

また、協定を結んでも残業は無制限にできるわけではありません。
2019年の法改正で、原則 月45時間・年360時間 が上限に定められました。特別な事情がある場合でも、月100時間未満・複数月平均80時間以内など厳しい条件の範囲内に限られます。

つまり36協定は、会社の都合で働かせるためのものではなく、社員の健康を守るために残業時間をルール化する仕組みなのです。

羊一さん
羊一さん

36協定は難しく聞こえますが『残業しすぎを防ぐ約束』なんです。社員を守るためにあるルールだと考えるとグッと身近に感じませんか?

(3)過重労働が招く労災リスク

過重労働は「体調不良」だけで終わりません。長く放置すると「労災(労働災害)」として会社に責任が及ぶケースもあります。

健康被害と労災認定

長時間労働や強いストレスの中で働き続けると脳卒中や心筋梗塞などのリスクが急上昇します。厚生労働省は「月80時間を超える残業」を過労死ラインと定めこれを超える残業が続くと脳・心臓疾患で労災認定されることがあります。
また、うつ病や適応障害などの精神疾患も過重労働が原因と認められれば労災となります。

事故リスクの増加

疲労や睡眠不足は集中力を大きく低下させます。
・運送業では居眠り運転による交通事故
・建設業では高所作業での転落や重機操作ミス
こうした現場事故は過重労働が背景にあるケースが多いのです。

会社への影響

労災が起きれば社員やその家族が苦しむのはもちろんのこと会社自体も労基署からの指導や社会的信用の失墜を避けられません。
「忙しいから仕方ない」を放置すれば最悪の場合、命を奪いかねない労災につながるのです。

羊一さん
羊一さん

働きすぎのリスクを知ったら次はどう防ぐか、難しいことじゃなくてもちょっとした工夫で改善できるんです。今日からできるヒントを紹介します!

(4)今からできることリスト

① 勤怠を「見える化」

 ◎打刻・PCログ・現場稼働を一元管理し、誰がどのくらい働いているかを把握。

 ◎サービス残業を防ぎ、長時間労働の芽を早期に発見。
まずは「実態を知ること」が改善の出発点です。

② 業務の偏りをなくす

 ◎進捗ボードで仕事を可視化し特定の人に頼らない体制を作る。

 ◎繁忙期は一時的に増員や外注を検討。
負担の分散が社員の疲弊防止につながります。

③ 休みやすい仕組みを作る

 ◎ノー残業デーを設定し「今日は絶対に帰れる日」をつくる。

 ◎計画有給やリフレッシュ休暇を導入。

 ◎当番制の引き継ぎで「休んでも回る」体制を整える。
「休める安心感」があるだけで社員の定着率も上がります。

④ 効率化の小ワザ

 ◎会議は目的を明確にし、30分以内で終了。

 ◎チャットやテンプレートでやり取りの無駄を削減。

 ◎情報共有はクラウドで一括化。
 小さな工夫の積み重ねが残業削減の大きな力に。

⑤ 現場ならではの工夫(建設・製造など)

 ◎工期に余裕を持った計画を立てる。

 ◎一斉閉所日を設定して確実に休める日を作る。

 ◎ICT(電子黒板・進捗管理ソフト)を導入し時短。
「現場だから休めない」を「休める前提の段取り」に変えましょう。

⑥ 36協定の点検と運用

 ◎残業超過のアラートを設定。

 ◎一定時間を超えたら上長面談や配置見直しを行う。
 法律のためだけでなく、社員を守る仕組みとして機能させます。

⑦ 早めの声かけと相談窓口

 ◎上長による1on1面談を定期化。

 ◎産業医や外部相談窓口の案内を常に見えるところに。

 ◎ストレスチェックの結果は必ずフィードバックを行う。

「声を上げられない社員」を救う仕組みが事故や病気を未然に防ぎます。

2. 企業事例

【伊藤組土建株式会社】
(北海道/建設業/従業員数433名)

 

クラウド勤怠管理システム導入で長時間労働を是正
本社で全現場の労働時間を一元管理して残業状況を見える化し効率化により週休2日制などの導入を実現

 

(施策)
① 勤怠管理データをクラウドで一元管理
 クラウド型の勤怠管理システムを導入し本社で全現場の労働時間を一括把握。複数現場の労働時間管理という建設業特有の課題に対応。

 
② 残業多発現場を重点フォロー
 一元管理によって残業が多い現場を的確に把握し本社からサポート。作業時間の平準化や的確な人員計画につなげた。

 
③ 現場の事務負担を軽減
 安全書類のチェック業務を外部委託し事務スタッフを現場に配属。現場従業員の雑務負担を減らし本来業務に専念。生産性向上を実現。


④ 週休2日制など働き方改革を推進
 業務効率化により天候に左右され休みにくい建設業界でも週休2日制・時間単位有給休暇・シフト勤務の導入を推進し従業員がリフレッシュできる環境づくりにつなげた。

 

(成果)
◎ 全現場の残業状況を可視化し作業時間の平準化と適切な人員計画を実現
◎ 安全書類の外部委託と事務員配置で現場の業務負担を削減し生産性が向上
◎ 週休2日制・時間単位有給休暇・シフト勤務の導入で従業員がリフレッシュできる職場環境を整備

 

(うまくいった理由)
一元管理で全容把握:本社で全現場の労働時間データを管理し残業状況を見逃さない体制
残業偏りを是正:残業が多い現場を把握次第フォローし負荷を分散
雑務を現場から外す:書類確認など周辺業務を外注・専任化し現場は本来業務に集中
休める職場に転換:週休2日制など思い切った制度導入で休暇取得を後押し

(参考:国土交通省「建設業における働き方改革推進のための事例集」より)

羊一さん
羊一さん

伊藤組土建は「全体を見える化して、現場の負担を減らす」工夫で成果を出しています。クラウド勤怠で全現場を把握し残業が多い現場は本社がサポート。さらに書類業務を外注して現場は本業に集中できるようにしました。その結果建設業でも週休2日制や有給取得が進み「休める職場」へシフト。仕組み次第で休めない業界でも働き方は変えられる参考になる事例です。

【ライオンパワー株式会社】
(石川県/製造業/従業員数約200名)

 

ポイント制と多能工化で長時間労働を半減
残業削減の仕組みとスキル分散により過重労働を是正し離職率も低下

 

(施策)
① ポイント制で「早く帰る」仕組み化
 退社時間に応じてポイントを付与し賞与に反映。定時退社で+10ポイント30分遅れるごとに減点。社員に「早く帰る」動機を与えた。

 

② 残業時間を可視化し改善
 ポイント制を導入したことで残業の実態が明確になり社員の働き方が意識改革。1年で残業時間が約半減した。

 

③ 多能工化で業務を分散
 製造部門で多能工化を推進。ベテラン社員に業務が集中する構造を改善し複数人が同じ機械を扱える体制に。残業の偏りを解消した。

 

④ 全社展開と制度定着
 半年の試行後主要機械はほぼ全員が操作可能に。全社的に多能工化を広げ属人的な業務依存を解消した。

 

(成果)
◎ 月平均残業時間を約60時間 → 約30時間に半減
◎ 有給休暇の平均取得日数を6日 → 10日に改善
◎ 年間4〜5名いた離職者が現在は年間1名程度に減少
◎ 長時間労働の是正と同時に人材定着・労働環境改善を実現

 

(うまくいった理由)
仕組みで働き方を変える:ポイント制で社員の意識を行動に直結
スキルを分散:多能工化によりベテランへの過度な依存を解消
試行から定着へ:半年の試行を経て制度を全社展開し定着させた
成果が見える:残業削減・有給取得増・離職率低下という具体的成果が社員の納得感を高めた

(参考:厚生労働省「働き方改革取組事例」より)

羊一さん
羊一さん

ライオンパワーはユニークなポイント制と多能工化で“残業を半減”させた好事例です。仕組みで社員の行動を変えスキルを分散させることで一部の人に負荷が集中しない体制をつくりました。数字で成果が見えるから社員の納得感も高く離職率の低下にも直結しています。

3. まとめ

過重労働のリスクを知る

社員の健康被害だけでなく、労災や離職、生産性低下など会社全体への打撃に直結
▶︎ 「働きすぎ=会社の損失」と捉えることが第一歩

 

36協定は“残業しすぎ防止の約束”

法律で定められた労働時間の上限を守るための仕組み
▶︎ 書類提出で終わらせず「社員を守るためのルール」として活用

 

労災リスクは会社の信用問題にも

心疾患・脳疾患や精神疾患、現場事故が労災認定につながる
▶︎ 「忙しいから仕方ない」を放置すれば命や信用を失いかねない

 

今日からできる小さな工夫

勤怠の見える化、仕事の分散、ノー残業デーや計画有給
会議短縮やICT導入など現場に合った効率化
▶︎ ほんの少しの改善でも「休める安心感」と「働きやすさ」に直結

 

実際の成功事例に学ぶ

伊藤組土建:クラウド勤怠管理と業務効率化で週休2日制を実現
ライオンパワー:ポイント制と多能工化で残業を半減し離職率も低下
▶︎ 業種に関わらず「仕組み化」が働き方改革の鍵

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