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「定期健診、つい後回しにしてしまう…」
そんな社員の声、聞いたことありませんか?
健康経営を進めるうえで、定期健診の受診率を高めることは“基本中の基本”。でも実際には、「忙しい」「面倒」「タイミングが合わない」など、社員側のハードルも多いのが現実です。
一方で、定期健診の受診率が実質100%を超える企業もあります。どうやって“受けたくなる工夫”をしているのでしょうか?

Sailing Dayの羊一です。
健診を「受けさせる」ではなく、「受けたくなる」に変える工夫がカギです!今回は定期健診の受診率を100%に近づけた企業の取り組みをご紹介します。
1. “定期健診受診率100%”が求められる理由
「忙しくて行けなかった」「まだ若いから大丈夫」定期健診を受けていない理由としてよく聞く声です。
しかし、企業にとって定期健診は“義務”であると同時に、“社員を守るための最低ライン”でもあります。

健康経営を進めるうえで、この定期健診の受診率を100%に近づけることは、とても重要な意味を持ちます!
①健診未受診はリスクの放置
健診を受けていない社員がいるということは
◎重大な病気の早期発見のチャンスを逃している
◎病気のまま業務を続け、パフォーマンスや安全性に影響を及ぼしている可能性がある
◎「健康への意識が薄い職場」と見られてしまうリスクもある

未受診は本人だけでなく企業全体にとってもリスクなのです!
②働く人を守る“はじめの一歩”
定期健診は、健康課題を「見える化」する入り口です。
高血圧・糖尿病・脂質異常などは、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いため、健診による早期発見が欠かせません。早期に気づければ、生活習慣を見直すだけで改善できることもあります。
③「実質100%」は評価を大きく左右する
健康経営優良法人の認定において、「定期健診受診率の実質100%」は必須項目ではないものの、重要な評価ポイントの一つです。受診率が極端に低い場合は、健康経営の基本が整っていないとみなされ、全体の評価に大きく影響します。

定期健診の受診率が低いと、それだけで「健康管理が甘い会社」と見られてしまいます。ここが健康経営のスタートラインです。
2. 健康経営優良法人と「定期健診受診率(実質100%)」の関係
「健康経営優良法人認定制度」は、経済産業省が推進する制度で、社員の健康管理に積極的に取り組む企業を『見える化』し、社会的に評価する仕組みです。
その評価項目の一つに、「定期健診受診率(実質100%)」の達成が含まれています。

認定要件から見ていきましょう!
(1)健康経営優良法人の認定要件
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の申請には、「必須項目」7つと「評価項目」15項目があります。
「定期健診受診率(実質100%)」の達成は、「評価項目のひとつ(①番)」に該当します。

(2)申請時のチェック項目
Q1.未受診者に対して早期に受診するように、どのような受診勧奨を行っていますか。(いくつでも)
1 未受診者に対して個別にメールや文章等での通知
2 未受診者に対して個別に声かけ・面談
3 未受診者に対して個別に再度日程を設定
4 特に行っていない ⇒評価項目不適合
(出典:経済産業省 健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)認定申請書より)

定期健診の受診率を“実質100%”にした企業の取り組みを見ていきましょう!
(3)企業事例
【三菱商事株式会社】
社内診療所・専属医体制
▶︎本店・関西支社・中部支社に常駐診療所を設置。内科・眼科・整形外科など各専門医を配置し、医療体制を強化
受診後フォロー&再検診促進
▶︎ 定期健診後、3カ月・6カ月ごとに再検査を個別に呼びかけ、未受診者へのフォローを徹底
【住友生命保険相互会社】
定期健診+2次検診対象率の低維持
▶︎ 2023年度は、2次検診対象者率を27.1%と目標未満に維持し、保健指導と健康診断両輪で推進
部門や経営会議と連携したPDCA体制
▶︎ 人事・安全衛生部門が主導し、経営会議で審議と報告を継続的に実施
【サントリーホールディングス】
定期健診×専門代行×受診後フォローのスムーズ連携
▶︎健診代行サービス「Wemex」による手間削減と履歴管理
▶︎健診受診率・再検査率 100%を目指す姿勢
▶︎健康アプリ「SUNTORY+」で行動変容を促し、後再検査フォローも充実

どの会社も“受診しやすい環境づくり”に力を入れています。ここで一度、企業別に『どの対策をしているか』をチェック項目別に比べてみましょう!
(4)定期健診受診率(実質100%)に関する企業別取り組み一覧
チェック項目 | 三菱商事 | 住友生命 | サントリー |
---|---|---|---|
1. 未受診者への個別通知 | 再検査対象者に個別呼びかけ | 記載なし | アプリや健診代行サービスで通知管理 |
2. 個別の声かけ・面談 | 再検査ごとにフォロー体制あり | 保健指導と連携 | 再検査後のフォロー支援あり |
3. 日程の再設定フォロー | 3・6ヶ月ごとの再通知 | 明記なし | 代行サービスにて調整支援 |
4. 特に行っていない(評価不適合) | ― | ― | ― |

ただ通知するだけでは、なかなか受けてもらえないのが現実ですよね。だからこそちょっとした楽しくなる工夫が効果的なんです!次はそのヒントをご紹介します。
(5)定期健診促進アイデア集
◎未受診者にはメールや社内チャットで丁寧に通知し、受診の予定確認を行う。
◎必要に応じて上司や産業保健スタッフが声かけ・面談で受診を後押し。
◎スケジュール調整が難しい社員には、再設定のフォローも柔軟に行う。
◎受診後に『その場でくじ引き』や『デジタルくじ』が引ける。
◎景品例:健康グッズ(ストレッチチューブ・ヨガマット)/コンビニスイーツ券/推しの名言入りステッカーなど。
◎健診を受けた日に使える『健康ランチ無料券』『栄養相談付きランチ券』などを配布。
◎ 健診のあとに『ちょっといいことがある』仕組みをつくると参加率UPに繋がる。
◎「健診を受けたら、どんなごほうびが欲しい?」というアンケートを実施。
◎人気のアイデア(お菓子付きランチ、早帰り券、好きな席で仕事…など)を、実際の企画として実施すれば、“みんなでつくる健診週間”に参加感が生まれ、「私も受けようかな」と自然と気持ちが動きます。
◎健診受診で社内ポイントを付与。ポイントは社食・カフェ・社内ストアなどで使用可能。
◎年度末にはポイント上位者へ表彰、プチ賞品なども。
◎健診時間の勤務扱い+移動含めて半日休暇扱いに。
◎「健診に行きやすい」「サボってると思われない」心理的な安心感を提供。
「一人で行くのはちょっと気が重い…」という人に効果的なのが“ペア受診”。
仲の良い同僚と同日に予約できるようサポートすれば、『ついで感覚』で行けるようになり、心理的ハードルを下げられます。

どれも低コストまたは運用負担が小さいものばかり。中小企業でも「楽しく・気軽に」始められます。小さな工夫の積み重ねが、社員の行動を変え、企業の信頼にもつながっていくのです。
3. まとめ
◎定期健診の受診率100%は、数字以上に「企業の姿勢」を問われるポイントです。
▶︎ 健康に本気で向き合っているかどうかが見られます。
◎「義務だから受けさせる」から、「自分のために受けたくなる」へ。
▶︎ その“空気づくり”が鍵となります。
◎各社の工夫には、「楽しさ」「気軽さ」「ちょっとしたごほうび」などの仕掛けが満載。
▶︎ 健診のイメージを変える工夫が受診率UPにつながっています。
◎中小企業でも、今日からできる取り組みがたくさんあります。
▶︎ 例:健診日を勤務扱いに/くじ引きイベント/ランチ券プレゼント など
◎定期健診100%は、健康経営の“通過点”。
▶︎大事なのは、その先の「元気に働ける毎日」をつくること。

