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「保健指導・特定保健指導、何が違うの?」
「中小企業でもできるの?」
「健康経営優良法人認定制度の項目にもある【保健指導・特定保健指導】の内容が知りたい」

今回は、保健指導と特定保健指導の違いをわかりやすく説明し、中小企業が実践しやすい方法を紹介します。
1.保健指導・特定保健指導とは?
保健指導=「健診後の生活習慣アドバイス」
特定保健指導=「メタボ予防のサポートプログラム」
(1)保健指導
保健指導とは、健康診断の結果をもとに行う生活習慣アドバイスです。
どんな人が対象?
◎健康診断の結果をもとに、生活習慣に注意が必要な人
具体的には、血圧が高め、血糖値が高め、コレステロール値が基準を超えている、脂質異常など、生活習慣病が心配される人たち。
何をする?
◎産業医や保健師、看護師が、健康診断後の結果説明や生活習慣のアドバイス
「食事を見直しましょう」
「運動を取り入れてみましょう」
「お酒やタバコを控えましょう」
食事・運動・休養・禁煙など個人の状況にあわせた指導。
医療行為ではないので、薬の処方などは含まれない。

「忙しくて病院に行かない」「自分はまだ大丈夫」と思いがちな人は自分から保健指導を受けないので、企業側からアクションをかけましょう!
(2)特定保健指導
特定保健指導とは、いわゆるメタボ予防のサポートプログラムです。
どんな人が対象?
◎40〜74歳の健康保険加入者のうち、「特定健診(メタボ健診)」でメタボリックシンドローム予備群と判定された人
つまり、お腹まわりが基準より大きく、生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・痛風・心臓病・脳卒中)のリスクが高いと判断された人たち。
何をする?
◎特定健診後に保健師や管理栄養士が中心となって、一定期間(3ヶ月)の支援を行う
具体的には、保健師や管理栄養士が、面談で食事や運動の状況を聞き取り、一緒に改善の目標を立てる。その後、3ヶ月ほど電話やメール、面談などでサポートを続け、無理のない範囲で生活改善を後押しする。

特定保健指導は、健康保険組合や外部の専門機関が中心となって進めるもので、企業側が直接やるものではありません。企業側は、社員に参加を促したり、取り組みやすい職場環境をつくる工夫をしましょう!
(3)保健指導・特定保健指導の比較
項目 | 保健指導 | 特定保健指導 |
---|---|---|
対象者 | 健診でリスクが見つかった人 | 特定健診でメタボ予備群と判定された人 |
実施内容 | 結果説明、生活習慣のアドバイス | 面談+目標を立てて3か月程度の継続フォロー |
実施の流れ | 健診後に企業・産業医が対応 | 特定健診後に健保組合・外部機関が対応 |
法的位置づけ | 会社の努力義務 | 医療保険者(健保組合等)の義務 |
2.特定保健指導で企業ができること
特定健診(メタボ健診)後に保健師や管理栄養士が中心となって、一定期間(3ヶ月)の支援を行う『特定保健指導』

ここでは、『特定保健指導』の具体的な流れと企業ができることを見ていきましょう!
①特定健診の実施
特定保健指導は、まず 特定健診(メタボ健診) を受けることから始まります。
対象は40〜74歳の社員で、腹囲(お腹まわり)、血圧、血糖値、脂質などを検査し、ここで生活習慣病のリスクがないかをチェックします。
この健診は企業の健康診断と一緒に実施する場合もありますが、中小企業(協会けんぽ)は健診とは別に個別に医療機関を受診することがあります。

受診率を上げるためには企業側の「ぜひ受けてください」という呼びかけが大切です。
②対象者の選定
健診の結果が出たら、健康保険組合などが結果を分析し、「メタボ予備群」「生活習慣の改善が必要」という人を特定します。
この段階では企業が直接選ぶわけではなく、健保組合や医療職が科学的な基準で対象者を決めます。

企業側は対象になった社員が参加しやすいように
◎気軽に参加できることを事前に伝える
◎勤務時間中の実施を認める
◎参加者のプライバシーに配慮する
などの雰囲気作りをしよう!
③初回面談と目標設定
対象となった社員には、保健師や管理栄養士などの専門スタッフが面談を行います。
この面談では、現在の生活習慣(食事内容、運動習慣、喫煙・飲酒の状況など)を聞き取り、「何をどれくらい改善できそうか」を一緒に話し合います。

◎大盛りを止める
◎ジュースではなくお茶にする
◎エレベーターではなく階段を使う日を増やす
といった無理のない小さな目標を一緒に立てます!
④約3か月の継続支援
面談後は約3か月間、電話やメール、場合によっては追加の面談などを通じて、専門スタッフがサポートを続けます。
途中で「やっぱり難しいな」と感じることがあっても、相談できる相手がいることで、あきらめずに続けやすくなります。

企業側は参加の後押しや協力を行う立場なので、プライベートに配慮しつつ「最近どう?」と声をかけたり、取り組みやすい職場環境を整えましょう!
3.健康経営優良法人認定制度にある保健指導・特定保健指導の項目について
『健康経営優良法人認定制度』は経済産業省が健康経営の取り組みをする企業を“見える化”して応援するために、2016年に作られた評価制度です。
その認定基準の中に、『保健指導・特定保健指導』 の実績状況を聞かれる設問が2つあります。

では、具体的にどんなことを問われるのでしょうか?
1つ目
Q. 保険者による特定保健指導の実施を促すために事業主側としてどのような取り組みを行っていますか。(いくつでも)
◆特定保健指導の対象者がいない場合も、ルールの整備・明文化を行っていることをもって取り組みとみなします。
◆特定保健指導の対象者は特定健診(いわゆるメタボ健診)の結果、生活習慣の改善が必要と判断された人を指します。
※「6.対象者が特定保健指導を受けやすいよう、特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している」は、
事業主または保険者が事後指導等保健指導と特定保健指導を合わせて同一の事業者へ委託することを想定しています。
厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 4.2版)」
38ページにおいて、「意欲的な事業者が、事後指導等と特定保健指導を一体的に実施する」場合の想定として、
「事業者を特定保健指導の実施委託者とする」または「事業者と保険者が連携し、同じ委託先と委託契約を締結し、
保健指導を一体的に実施するよう契約で規定する。」旨が示されています。

『特定保健指導』の実施をどのように促しているか問われていますね。
自社がどのくらいできているのかチェックしてみましょう!
★Q24.健康診断の結果を踏まえ、特に健康の保持に努める必要があると認められる従業員に対し、
医師、保健師、地域産業保健センター等による保健指導(特定保健指導を除く)
を実施していますか。(1つだけ)
◆労働安全衛生法第66条の7に基づく有所見者等に対する保健指導を想定しています。(法令上は努力義務)

中小企業の多くは産業医を置いていないため、地域産業保健センター(厚労省の支援組織)などを活用すればOK!労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方を対象として、労働安全衛生法で定められた保健指導などの産業保健サービスを無料で提供しています。(参考:こころの耳より)
4.よくある疑問(Q&A)
Q1. お金はどれくらいかかりますか?
A. 基本的に『特定保健指導』の費用は、健康保険組合が負担します。『保健指導』は労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方は無料で受けることができます。

会社がやるのは、対象社員への案内やスケジュール調整などです。
Q2. 人手が足りなくて不安です。誰が対応するの?
A. 指導そのものは外部の保健師や管理栄養士が担当します。企業側の役割は「社員に案内する」「必要な調整をする」程度です。

中小企業でも無理なく回せる内容なので安心してください。
Q3. 支援はありますか?
A. はい、あります。
健康保険組合や自治体によっては、以下のようなサポートがあります。
◎健康セミナーや運動プログラムの提供
◎管理栄養士や外部カウンセラーの派遣
◎保健指導などの産業保健サービス

まずは健康保険組合や産業保健センター、健康保険協会に相談してみましょう。
Q4. 小さく始めるなら何からやればいい?
A.以下のような取り組みから始めてみましょう。
◎社内で健診の受診率を確認して受診を促す
◎特定保健指導の案内に「会社として推奨します」とひと言添える
◎面談の時間や場所を整え、社員が参加しやすい環境を作る

できることから一歩ずつ始めましょう。
5.まとめ
◎保健指導・特定保健指導とは?
保健指導:健診後の生活アドバイス(血圧・血糖・脂質リスク者向け、産業医・保健師が助言)
特定保健指導:メタボ予防プログラム(40〜74歳、特定健診で選定、面談+3か月支援)
保健指導=企業の努力義務、特定保健指導=健保組合の義務
◎特定保健指導の流れ
①特定健診(メタボ健診)を受診
②健保組合が対象者を選定
③面談で改善目標を設定
④約3か月間の継続サポート(電話・メール等)
◎健康経営優良法人認定で問われること
・案内の周知、担当者設置、管理職教育
・就業時間内実施、休暇付与、面談場所・オンライン環境整備
・労安法に基づく保健指導(産業医・地域産業保健センター活用)
◎疑問(Q&A)
お金は? → 特定保健指導は健保負担、保健指導は小規模企業無料
人手は? → 外部専門職が実施、企業は案内・調整のみ
支援は? → 健保・自治体のセミナーや専門職派遣あり
小さく始めるなら? → 受診促進、案内時のひと言、面談環境づくり

