健康経営の取り組み、実施して満足していませんか?
「ラジオ体操を導入した」「研修を行った」など、施策そのものは形になっていても、本当に効果があったのか?社員に変化はあったのか?という、その後の振り返りが抜けているケースも少なくありません。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。
今回は、健康経営優良法人の認定に必要な「取り組みの評価と改善」について、なぜ必要なのか・どう進めるのかをわかりやすくご紹介します。
1. なぜ「評価・改善」が大切なのか?
健康経営は、「やれば終わり」の一回限りの取り組みではありません。
むしろ、社員の健康課題や働き方の状況は、時間とともに変化するものです。
たとえば、数年前までは喫煙率が課題だった会社が、今はメンタル不調や運動不足の方が深刻…ということもありえます。
こうした変化に気づき、柔軟に対応していくには、「今の施策が効果を発揮しているか?」を定期的に見直し、必要に応じて改善する仕組みが欠かせません。
また、健康経営優良法人の認定においても、「評価と改善を行っているかどうか」は必須項目であり、重要な審査ポイントです。実際、評価・改善の取り組みがある企業ほど、継続的な成果が見えやすく、認定後の取り組みにも深みが出てきます。
(1)「評価・改善」の取り組み方3ステップ
次の3ステップで進めるとスムーズです。
① 実施した内容と結果を「見える化」する
例:健康診断の受診率、ストレスチェックの結果、研修の満足度など
こうした数値や声を集めることで、現状を正確に把握できます。
② 評価結果から「課題」を明確にする
数字だけを眺めて終わらせるのではなく、「どこに問題があったか」「なぜ期待した効果が出なかったか」を掘り下げて考えてみる。
たとえば「毎朝の体操を導入したけれど、参加者が少ない」という場合は、実施時間が社員の業務スケジュールに合っていない可能性や運動内容がハードすぎて継続が難しいのかもしれません。
また、「健康診断の再検査を勧めても受診率が伸びない」というケースでは、社員への案内方法に課題があることも。たとえば、通知が見逃されやすかったり、「再検査の必要性が十分に伝わっていない」といった背景が考えられます。
③ 改善策を立てて「次の一手」を実行する
評価をもとに、次年度や次回に向けた改善策を実行する。
「やってみた → 振り返った → 改善して再実行」
このサイクルの繰り返しが、健康経営の定着と質の向上を生み出します。
(2)実践したら記録しよう!テンプレートあり
上記の3ステップを下記のテンプレートを使って書き出してみましょう。

※A4で印刷して使用してください。
月1回、または施策ごとに記入しておくとスムーズです!

「評価して終わり」にならないよう、改善のアクションを必ずセットで記録するのがポイントです!
2. 健康経営優良法人認定制度申請時のチェック項目
経済産業省が認定している健康経営優良法人認定制度には、申請時、下記の健康経営のチェック項目があります。
健康経営の取り組みをどのように評価していますか。評価を実施している場合は実施している内容を以下から選択してください。
1.実施した結果を確認している
2.実施した結果を確認し、前年度等の過去の取り組み結果と比較している
3.実施した結果を確認し、他企業の事例や公表データ等の結果と比較している
4.実施した結果を確認し、保険者等の外部の専門家による評価を実施している
5.実施した結果の確認や評価をしていない ⇒健康経営優良法人不認定
上記で1〜4とお答えの場合、評価をもとに改善を行っていますか?
1.評価をもとに、社内で取り組みの見直しや、次の取り組みを検討している
2.次の取り組みを行うにあたり、他社の成功事例等の情報を収集している
3.次の取り組みを行うにあたり、保険者等の外部の専門家から改善方法についてアドバイスをもらっている
4.次の取り組みについての改善策を策定している
5.特に改善を実施していない ⇒健康経営優良法人不認定
健康経営の施策を評価・改善するにあたり、選択肢以外で実施していることがあれば、お答えください。
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(1)健康経営の取り組みに対する評価・改善 参考企業例

「評価・改善」の取り組み方3ステップに合わせて見ていきましょう。
静岡部品株式会社
① 実施した内容と結果を「見える化」する
若手従業員の病気をきっかけに、健康経営の重要性を再認識。
◎健康診断の実施状況や血圧測定習慣をチェック
◎傷病日数を毎年記録
▶︎2018年:682日 → 2022年:129日へ大幅減少
◎休職者数も2022年にはゼロに
◎取り組みの成果を数値で“見える化”し、効果を実感
②評価結果から「課題」を明確にする
当初は「病気の治療・再発防止」が中心の対策だった。
◎評価の結果、「予防へのアプローチ不足」が課題として浮上
◎若年層の健康診断受診率が低いという現状にも気づく
◎健康管理の習慣化・意識づけの必要性を認識
③ 改善策を立てて「次の一手」を実行する
取り組みの方針を「治療」から「予防」へとシフト。
◎実施した改善策
▶︎35年間続くラジオ体操を活用し、日常の運動習慣を促進
▶︎ヘルシー弁当を提供し、食生活をサポート
▶︎静岡県と連携し、血圧測定の習慣化を推進
◎健康意識の高まりと成果を、従業員全体で実感
株式会社美警
① 実施した内容と結果を「見える化」する
◎従業員の健康状態を把握するために個人カルテを作成
◎血圧測定の結果をグラフ化して可視化
◎減量挑戦者の体重変化(12〜28kg)を数値として記録
◎食生活の課題(炭水化物中心)を把握し、改善の方向性を共有
②評価結果から「課題」を明確にする
◎従業員の高齢化と人材不足が経営課題として浮上
◎健康診断や日常観察から、生活習慣病リスクが高いことを確認
◎食事内容の偏り、野菜不足、自己管理の難しさが課題に
◎健康維持と長期就労の両立が必要であると認識
③ 改善策を立てて「次の一手」を実行する
◎食生活の見直し支援として、食事アドバイス付き個人カルテを導入
◎野菜たっぷりイベントの開催で、楽しみながら食生活改善を促進
◎減量チャレンジ企画を実施し、目標設定とモチベーション向上を支援
◎成功者への表彰や、血圧データのグラフ化によるフィードバックを実施
新入社員からも「従業員を大切にしている会社」として高く評価されたそうです。
上記2社の結果は下記の通りです。
健康経営の取り組みをどのように評価していますか。
→2.実施した結果を確認し、前年度等の過去の取り組み結果と比較している
評価をもとに改善を行っていますか?
→1.評価をもとに、社内で取り組みの見直しや、次の取り組みを検討している

チェック項目の条件を十分に満たしていますね!
(2)今からできることリスト
やったことの中身そのものよりも、やったあとどう活かしたか?が問われることが、この「評価・改善」という項目です。
取り組みをやりっぱなしにせず、結果を見て、次につなげていくことが大切です。
① 実施した内容と結果を「見える化」する
▶︎ 健康診断の受診率や再検査率を毎年チェック
▶︎ ストレスチェックの実施率や満足度アンケートの集計
▶︎「今年は何人がラジオ体操に参加したか?」など、数値で集計
それらを前年と比べるグラフにしてみましょう。
② 評価結果から「課題」を明確にする
▶︎ 参加率が下がった理由は?
▶︎ 反応が薄かったのは、案内が伝わっていなかったから?
▶︎ 健康診断の結果に偏りが出てきた?
「なぜ?」を考えることが、課題の明確化につながります。
③ 改善策を立てて「次の一手」を実行する
▶︎ 時間帯を変えて再実施
▶︎ 案内をメールだけでなく、ポスターでも掲示
▶︎ 参加しやすいように動画配信に切り替える
こうした工夫が、「改善」として評価されるのです。

大切なのは、評価から改善までの流れを記録として残すことです。
(3)申請にあたり保存しておくべきデータ
健康経営優良法人の申請に際しては、申請内容の正確性と信頼性を確保するため、申請期間の最終日から2年間、申請内容を裏付ける資料の保存が義務付けられています。
「健康経営の取り組みに対する評価・改善」では、下記のデータが求められる場合があるので、用意しておきましょう。
健康経営の取り組みを評価していることを確認できる資料(社内での報告資料等) 等
担当者は、しっかり資料をまとめておきましょう。
データ類は、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた場合には1週間以内に対応しましょう。
3. まとめ
◎「やって終わり」になっていないか見直そう
◎ 健康経営優良法人では「評価と改善」が必須
▶︎【ステップ①】実施内容を見える化
受診率や参加率を記録
アンケートや数値で効果を確認
▶︎【ステップ②】評価から課題を発見
参加率が低い理由は?
案内の方法に問題は? など
▶︎【ステップ③】改善して次の一手へ
時間や方法を見直す
周知の工夫や参加しやすい仕組みを導入
◎ データは申請後も2年間保存が必要!
◎ 小さな取り組みでもOK、記録がカギ!