健康診断のたびに「特定保健指導の対象」という通知を従業員へ送っている――
そんな健康経営・人事・総務ご担当者さまも多いのではないでしょうか。
この特定保健指導の実施率は、健康経営優良法人の評価にも関わる大切な指標です。
実施率は単なる数字ではなく、企業がどれだけ従業員の健康に向き合えているかを映す目安とも言えます。

こんにちは、Sailing Dayの羊一です。本記事では、特定保健指導の実施率が伸びにくい理由と、企業が無理なく取り組める改善ポイントを現場目線でわかりやすくお伝えします。
「やっている」から一歩進んで「きちんと届く」健康経営へ。
そのヒントを、ここで見つけてみましょう。
1. なぜ特定保健指導の実施率は伸びないのか
特定保健指導・保健指導とは、生活習慣病のリスクが高いと判定された人に対して、保健師や管理栄養士などの専門職が、食事や運動、生活習慣の改善をサポートする制度です。目的は、病気になってから治療するのではなく、今のうちに生活を整え、将来の病気を防ぐことにあります。
▼保健指導・特定保健指導については下記のブログで詳しく解説しています。
【2026 健康経営優良法人】保健指導・特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み
【健康経営】保健指導・特定保健指導の違いとは?健康経営優良法人との関係も解説 この特定保健指導・保健指導の実施率は、健康経営優良法人の評価項目にも含まれる重要なポイントですが、実施率が伸び悩んでいる企業も多くあります。
実施率が伸びない企業が多いのは、制度そのものが悪いからではありません。
多くの場合、
・従業員の「気持ち」
・企業側の「仕組み」
この2つの間に、小さなズレが生まれていることが原因です。
まずは、現場でよく起こっている3つの壁を見ていきましょう。
(1)従業員が「自分ごと」と感じられていない
特定保健指導の案内を受けても「まだ元気だから大丈夫」「今すぐ困っていない」と感じる人は少なくありません。自覚症状がないうちは、将来のリスクを実感しにくく「今はやらなくても平気」と考えてしまいがちです。
また「指導を受けても本当に変わるの?」「自分で何とかできる」と、効果を疑う人もいます。
このように、特定保健指導を“自分の問題”として捉えられない限り、参加しようという気持ちは生まれにくくなります。
(2)「忙しい」「面倒」が優先されてしまう
日々の業務に追われる中で、特定保健指導のために時間を確保するのは簡単ではありません。
「日程調整が大変」「業務を抜けづらい」「後で受けようと思っているうちに期限が過ぎる」こうした理由で、後回しにされるケースはとても多いです。
さらに、
①結果を確認する
②案内に同意する
③予約を取る
④面談の時間を確保する
このような手順が必要になると「ちょっと面倒だな」と感じてしまうのも無理はありません。

制度の価値よりも「受けにくさ」が勝ってしまっている状態が、実施率を下げる大きな要因になっています。
(3)制度の目的が十分に伝わっていない
特定保健指導という言葉から「注意される」「管理される」「生活を縛られる」といったマイナスのイメージを持つ人もいます。
本来は“プロから無料でアドバイスを受けられるチャンス”であるにもかかわらず、その価値が伝わっていないことが多いです。
目的やメリットが伝わらないままでは、特定保健指導は「面倒な手続き」「避けたいイベント」として受け取られてしまいます。
その結果「やらなくても困らないもの」と認識され、実施率は伸び悩んでしまうのです。
2. 健康経営優良法人では「実施率」はどう見られているのか
健康経営優良法人の認定では「特定保健指導を実施しているか」だけでなく「企業として、どれだけ本気で従業員の健康に向き合っているか」が見られています。
単に制度が“ある”だけでは不十分です。
「実際に活用されているか」「改善しようとしているか」という“取り組みの姿勢”そのものが評価対象になります。
健康経営優良法人認定の項目には「従業員に健康情報をきちんと届けているか」「特定保健指導を“受けやすくする工夫”をしているか」「実施率を把握し、改善しようとしているか」といった点が問われます。

ここで重視されているのは「保険者に任せているかどうか」ではなく、企業自身が主体的に関わっているかどうかです。
(1)実施率が高い企業がやっている共通の工夫
特定保健指導の実施率が高い企業には、いくつかの共通点があります。
それは、制度を「用意する」だけで終わらせず、“受けやすく、続けやすい仕組み”として育てていることです。
難しい施策をしているわけではありません。
ちょっとした工夫の積み重ねが、実施率の差を生んでいます。
実施率が高い企業では、社長や役員・上司からのメッセージがきちんと届いています。
たとえば「特定保健指導は業務の一環として受けて大丈夫です」「自分の体を守るために、ぜひ活用してください」このような言葉があるだけで『仕事を抜けるのは気が引ける』『忙しいのに受けていいのだろうか』といった不安が大きく減ります。

「会社として、あなたの健康を大切にしている」この姿勢が伝わることで、従業員は安心して行動できるようになります。
実施率が高い企業ほど“受けにくさ”を徹底的に減らしています。
たとえば「業務時間内に受けられるようにしている」「オンライン面談を導入している」「予約や日程変更が簡単にできる」「健康診断当日に初回面談を設定している」など、『時間がない』『面倒』という理由が生まれにくい環境を作っています。
制度の価値をどれだけ伝えても、“受けにくい”ままでは行動にはつながりません。

実施率を上げるためには、気持ちだけでなく導線の整備が欠かせない!
継続的な情報発信で“当たり前”にしています。
一度案内しただけでは、多くの人の記憶には残りません。
実施率が高い企業では、社内メール、社内報、朝礼やミーティングなどを通じて「なぜ特定保健指導が必要なのか」「受けた人にどんな変化があったのか」といった情報を繰り返し発信しています。
こうした積み重ねによって、「健康を大切にするのは当たり前」「特定保健指導を受けるのは自然なこと」という意識が社内に根づいていきます。

実施率が高い企業は、特定保健指導を「特別なイベント」ではなく、日常の中にある“当たり前の選択肢”に変えています。
3. 明日からできる!実施率を上げるための改善ポイント
特定保健指導の実施率は、ちょっとした工夫で確実に変えられます。
ここでは、今日からでも取り入れやすい3つのポイントをご紹介します。
(1)「義務」ではなく「メリット」として伝える
「対象だから受けてください」という伝え方では、どうしても“やらされ感”が生まれてしまいます。
そこで、次のように本人のメリットに置き換えて伝えてみましょう。
◎今のうちに生活習慣を見直すことで、将来の病気を防げる
◎体調が整うと、仕事のパフォーマンスも上がりやすい
◎プロに無料で相談できる貴重な機会

特定保健指導は「管理」ではなく“自分の体を守るためのサポート”であることをやさしい言葉で伝えることが大切です。
(2)業務時間内に受けられる環境をつくる
「忙しくて受けられない」という声は、個人の問題ではなく環境の問題であることがほとんどです。
◎就業時間中に受けてよいことを明確にする
◎上司から「業務として行ってきていいよ」と声をかける
◎繁忙期を避けて案内時期を設定する
こうした配慮があるだけで「受けていいのかな…」という不安は大きく減ります。

企業が「受けやすい場所」を用意することで従業員は安心して一歩を踏み出せるようになります。
(3)社内コミュニケーションに組み込む
特定保健指導を「年に一度だけ思い出す制度」にしないことも重要です。
たとえば、
◎社内メールで健康ミニコラムを配信
◎社内報で受診者の声を紹介
◎朝礼でワンポイント健康情報を共有
など、日常の中に“健康の話題”を少しずつ入れていきます。
こうした積み重ねによって、「健康を大切にするのは当たり前」「特定保健指導を受けるのは自然なこと」という空気が社内に育っていきます。
特定保健指導は、企業と従業員をつなぐ「健康への入口」です。その入口を少し通りやすくするだけで、実施率は着実に変わります。

“やっている”から“成果が出る”健康経営へ。小さな工夫の積み重ねが、健康経営優良法人にふさわしい職場づくりにつながっていきます。
4. まとめ
◎ 特定保健指導は、将来の病気を防ぐための大切な制度
◎ 実施率が伸びない原因は「自分ごとにならない」「忙しさ」「目的が伝わらない」こと
◎ 健康経営優良法人では、数字だけでなく“改善し続ける姿勢”が評価される
◎ 実施率が高い企業は「上司の後押し」「受けやすい仕組み」「継続的な発信」をしている
◎ 実施率向上のコツ
▶︎ 義務ではなく“メリット”として伝える
▶︎ 業務時間内に受けられる環境を整える
▶︎ 健康情報を日常に組み込む
小さな工夫の積み重ねが、“やっている”健康経営から“成果が出る”健康経営へと変えていきます。

この記事の監修 長谷 有希央
◎安眠インストラクター
◎睡眠&寝具インストラクター
◎健康経営アドバイザー
◎中小企業診断士 の資格を持つ「眠りと健康経営の専門家」です。