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無添加の食品を選ぶことは、食事を見直すうえで分かりやすい視点のひとつです。
一方で、食品添加物が使われているからといって、すべてを「体に悪い」と決めつける必要はありません。
実際、私たちが日常的に口にしている多くの食品には、保存性や安全性を保つ目的で食品添加物が使われています。重要なのは「無添加かどうか」ではなく、どのような添加物がどのくらい使われているのかを確認することです。

Sailing Dayの羊一です。
今回は、食品添加物とは何か、危険や安全性の考え方、種類や表示の見方などを分かりやすく解説します。

1.食品添加物とは?
食品添加物
食品の『製造・加工・保存』などの過程で使われる成分のこと
味や見た目を整えるためだけでなく、食品を安全に保ち、品質を安定させる目的で使用されています。

「添加物」と聞くと、特別な化学物質のように感じるかもしれませんが、実際には私たちの食生活を支えるために使われているものがほとんどです。では、何のために食品添加物は使われているのでしょうか?
(1)どうして使われるの?
食品添加物が使われる理由は、大きく分けて3つの目的があります。
◎食品を腐りにくくして食中毒のリスクを減らす
◎味や食感、色を安定させて品質のばらつきを防ぐ
◎製造や流通の過程で安全に食品を届けるため
食品は、作られてすぐに食べられるとは限りません。製造から出荷、輸送、店頭に並び、家庭で食べられるまでには、時間と環境の変化があります。
そこで役立っているのが、食品添加物です。
◎保存料・酸化防止剤
食品が傷んだり味や品質が落ちたりするのを防ぐ。家庭に届くまでの間も安全な状態が保たれる。
◎乳化剤・安定剤
本来分離しやすい水と油をなじませたり、凍結による食感の変化を防いだりする。
ドレッシングが分かれにくく、アイスクリームはなめらかに保たれる。


つまり、食品添加物は、食品を安定した品質で安全に届けるために使われています。
(2)昔と今の違い
食品添加物は、現代になって突然生まれたものではありません。
昔から人々は、食べ物を長持ちさせるために、塩漬けや酢漬け、乾燥といった方法を用いてきました。これも広い意味では、食品添加物の役割と同じ考え方です。
一方で、現代の食品添加物は、科学的な安全性評価を経たものだけが使用されている点が大きく異なります。現在は、使える種類や量が法律で定められていて、安全性が確認されていない成分は使用できません。

昔は、長年の経験から「こうすると大丈夫」と考えられて使われていましたが、現在はデータと基準にもとづいて管理されています。
2.食品添加物は本当に危険なのか?不安が生まれる理由
このように、食品添加物は食品を安定した品質で安全に届けるために使われています。
それでもなお、「本当に体への影響はないのだろうか」「長く摂り続けても大丈夫なのだろうか」と、不安を感じる人が多いのも事実です。

では、なぜ食品添加物が「危険」と言われているのでしょうか。
(1)危険と言われる背景(事例)
食品添加物が「危険」と言われる背景には、単なるイメージや噂だけではなく、過去の大規模な食品事故などが深く影響しています。こうした出来事が社会全体の不安を強め、添加物そのものへの懸念へとつながりました。
森永ヒ素(砒素)ミルク中毒事件
1955年(昭和30年)、粉ミルク製造過程で使われた添加剤にヒ素(砒素)が混入したことを起因として、主に西日本で乳幼児に甚大な健康被害が発生した事件があります。ヒ素混入の粉ミルクを飲んだ乳児は約1万3千人以上が中毒症状を示し、130人以上が死亡しました。事件後も後遺症を訴える人が多かったことが報告されています。この出来事は「食品の安全性が脆弱だった時代」の象徴として語られることが多く、添加物への不安感を強める一因となりました。(参考:ウィキペディアより)

この事件は、添加剤の原料に有害物質が混じっていたにもかかわらず、検査やチェックが十分に行われなかった点が、深刻な結果を招きました。
「発がん性がある」という噂が広まったパルスイート
パルスイートは、低カロリー甘味料として広く使われており、主成分はアスパルテームなどの人工甘味料です。
2000年前後から「アスパルテームは発がん性がある」「脳腫瘍の原因になる」といった内容の文章が、インターネットやチェーンメールを通じて拡散しました。
これらの多くは、動物実験や一部研究結果を誤解して一部だけが強調されて伝わったもので、摂取量や前提条件が省かれた情報でした。
実際には、アスパルテームは、日本の食品安全委員会や国際機関によって安全性評価が行われています。
食品安全委員会では、動物実験や疫学研究などのデータをもとにADI(1日摂取許容量)を設定し、通常の食生活における摂取量では健康への影響は認められないと評価しています。
また、欧州食品安全機関(EFSA)も、2013年に包括的な再評価を行い「アスパルテームの摂取と発がん性との関連を示す証拠は認められない」と結論づけています。(参考:食品安全委員会より)

パルスイートをめぐる不安は、研究結果の一部だけが切り取られて広まったことや「人工」「化学」といった言葉への心理的な不安が強まったということですね!
(2)不安を感じてしまうポイント
食品添加物が不安に感じられやすい理由は、過去の出来事だけではありません。情報の見え方や受け取り方によって、不安が大きくなってしまうケースもあります。
◎添加物の名称が分かりにくい
原材料表示に並ぶカタカナや化学的な名称を見ると「何の成分か分からない」「体に悪そう」と感じてしまう。
◎「自然=安心」「人工=あまり良くない」というイメージ
「自然由来のものは安心」「人工的なものはあまり良くない」という考え方も、食品添加物への不安を強める要因のひとつ。
こうした情報が断片的に伝わることで、「よく分からないから不安」「念のため避けておこう」というイメージが生まれやすくなる。

「テレビで紹介された=正しい」「周りが避けている=自分も避ける」といった印象や言葉のイメージをもとに判断する場面があると思います。食品添加物への不安も、危険性そのものではなく、イメージから生まれていることが多いです。
3.食品添加物の安全性評価とは?
食品添加物の安全性は「なんとなく安心」「なんとなく不安」といった感覚ではなく、明確な考え方と基準にもとづいて判断されています。

よくある誤解と使用基準を整理しましょう!
(1)無添加=安全という誤解
無添加であることと、安全であることは必ずしも同じではありません。
無添加食品は、乾物や味噌などの一部を除き、保存料などの添加物を使用していないため、消費期限が短く設定されています。早めに食べないとカビが生えたり腐りやすい食品が多いです。
一方で、添加物を使用した食品は保存料などで長持ちしますが、1日の摂取量基準が設定されているので、摂りすぎには注意が必要です。
【無添加と食品の安全性の違い】
| 考え方 | イメージ | 実際のポイント |
|---|---|---|
| 無添加 | 体に良さそう | 保存状態や管理が重要、消費期限が短く設定されることがある。 |
| 添加物あり | 体に悪そう | 長持ちはするが、使用量と目的が管理されているので摂りすぎ注意。 |

無添加は保存期間に注意!添加物は量に注意!
(2)安全性評価と影響の個人差
安全性評価は多くの人を対象とした基準です。そのため、高齢者や子供など体質や年齢による個人差も考慮する必要があります。
◎安全性評価
多くの人にとって安全と判断される基準(平均的な基準)
◎個人差
高齢者や子供など、体質や体調に合わせて量や頻度を意識して選ぶ

では、安全性を評価している使用基準とADI(1日接種許容量)を見ていきましょう!
(3)使用基準とADI(1日摂取許容量)とは
食品添加物は、使用基準とADIという2つの考え方で管理されています。
【使用基準とADIの役割】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使用基準 | 食品ごとに使用できる添加物の種類や量を法律で定めたルール。 |
| ADI(1日摂取許容量) | 人が一生毎日摂取し続けても健康への影響が出ないとされる量。 |
【ADIの例】
| 添加物名 | どんな目的? | 1日の上限量の目安 (70kgの大人) | 身近な食品でたとえると |
|---|---|---|---|
| アスパルテーム | 甘さを出す | 約2,800mg/日 | ダイエット飲料(500ml)を1日に9〜14本飲み続けた場合の量。 |
| スクラロース | 甘さを出す | 約350mg/日 | 低糖質デザートを1日に15〜30個食べるイメージ。 |
| アセスルファムK | 甘さを出す | 約1,050mg/日 | 清涼飲料(500ml)を10〜20本飲む量に相当。 |
| アスコルビン酸 (ビタミンC) | 酸化を防ぐ | 上限は特に決められていない | 食品中ではごく少量使用、栄養素としても知られている。 |
| ソルビン酸 | 傷みにくくする | 約1,750mg/日 | ハム・ソーセージ(1パック約100g)に約200〜500mg含まれる場合、1日に3〜7パック程度を毎日食べ続けて、ようやくADIに近づく目安。 |

普段よりもかなり多い量を摂らないと基準を超えることはありませんが、私たちは日常の中で無意識に何種類も添加物を摂っているので、気にする習慣はつけたいですね!
| 食品添加物の安全性評価のポイント |
|---|
| ◎無添加=安全とは限らない |
| ◎使用基準とADIで摂取量が管理されている |
| ◎体質に合わせて選ぶことが大切 |
4.食品添加物の種類と役割
食品添加物には目的や役割ごとに種類が分かれています。
(1)食品添加物の種類一覧表
まずは、よく使われている食品添加物の役割を見ていきましょう。
| 分類 | 主な役割 | 代表的な添加物 | 使用される食品例 |
|---|---|---|---|
| 保存料 | 傷みにくくする | ソルビン酸 | ハム、ソーセージ、漬物 |
| 酸化防止剤 | 変色や劣化を防ぐ | アスコルビン酸 | 飲料、加工食品 |
| 甘味料 | 甘さを付ける | アスパルテーム、スクラロース | 清涼飲料、デザート |
| 乳化剤 | 分離を防ぐ | レシチン | チョコレート、ドレッシング |
| 着色料 | 色を整える | カラメル色素 | 飲料、菓子類 |

それぞれ違う役割で使われているんですね。
(2)役割と目的
食品添加物は『食品を安全に、安定して届ける』という役割があります。
| 目的 | 具体的な役割 |
|---|---|
| 安全性の確保 | 食中毒や腐敗を防ぎ、家庭に届くまでの安全を守る |
| 品質の安定 | 色・味・食感を一定に保つ |
| 利便性の向上 | 保存期間を延ばし、流通や保存をしやすくする |

ここで大切なのは、添加物の有無ではなく「役割と量」です。使われる目的を知ることで、不安を必要以上に感じにくくなります。
(3)表示の見方
最後に、食品添加物を判断するうえで欠かせないのが原材料表示です。
「何が無添加なのか?」はスラッシュ(/)以降を見ると一瞬で分かる!
例
① 原材料:鶏肉、塩、砂糖、香辛料、/ 酸化防止剤、調味料(アミノ酸)

これは酸化防止剤と調味料は使われていることが分かります。
② 原材料:牛乳、砂糖、卵、バニラペースト

/がない=添加物なし(or ほぼなし)です。
スラッシュ以降が多い商品は…
必要以上の添加物が入っている可能性があり、加工度も高い傾向がある。
| チェックポイント | 見方のポイント |
|---|---|
| 表示順 | 原材料は使用量が多い順に記載される |
| スラッシュ(/) | 「原材料/添加物」の区切りとして使われることが多い |
| 一括名表示 | 「調味料(アミノ酸等)」のようにまとめて表示される場合がある |

添加物は、使われる目的を知って摂取量を守れば、危険ではないことがわかりました。日常でも意識をして、うまく食品添加物と付き合っていきましょう!
5.まとめ
◎「無添加=必ず安全」とは限らない
◎食品添加物は「保存性・安全性・品質」を保つ目的で使われている
◎「危険かどうか」は添加物の有無ではなく 「種類・目的・量」 で判断することが大切
◎食品添加物には使用基準やADI(1日摂取許容量)がある
◎不安は過去の事例や情報の伝わり方、イメージによって生まれやすい
◎原材料表示を見ることで、どの添加物がどの程度使われているかを確認できる
◎すべてを避ける必要はなく、自分や家族に合った選び方を意識することが大切
結論:食品添加物がたくさん入った食品を食べ過ぎないように意識して過ごそう!