「最近忙しくて寝不足だけど、週末に寝溜めすれば大丈夫」――そう思っていませんか?
実はその考えこそが、体と心に不調を招く原因になることがあります。平日の睡眠不足は“借金”のように積み重なり、気づかないうちに「睡眠負債」として蓄積されていきます。
「睡眠負債」がたまると、集中力の低下や疲労感、イライラなどが起こりやすくなり、仕事のパフォーマンスにも影響を与えます。

本記事では「睡眠負債」とは何かをわかりやすく解説しながら、寝不足を解消するために今日から実践できる具体的な方法を紹介します。
忙しいビジネスパーソンでも無理なく取り入れられる内容なので、ぜひ参考にしてください。
1. 睡眠負債ってなに? ~毎日の「睡眠の借金」~
借金と聞くとビックリしてしまいませんか?
睡眠負債とは、日々の睡眠不足が借金のように蓄積した状態のことです。例えば「1日くらい寝不足でも平気」と思っていても、それが何日も続けば睡眠不足の“借金”がどんどん貯まっていきます。
怖いのは、慢性的な寝不足に慣れてしまい、自分では不調に気づきにくい点です。
(1)日本人の平均睡眠時間
日本人の平日の睡眠時間は、この30年ほどで少しずつ短くなってきています。
1995年には平均7時間27分ありましたが、2020年の時点で平均は7時間12分と、1995年より15分も短くなっています。
この数値は、国際的に見ても短く、成人を対象とした経済協力開発機構(OECD)のデータでは日本は世界一睡眠時間が少ない国となっています。
(参考文献:ビジネスに活かす「睡眠資格」SLEEP PLANNER)
では「週末に寝だめをして帳尻を合わせているのか」というと、実はそうでもありません。
2020年の調査では、土曜日の睡眠時間は7時間46分、日曜日は8時間2分でした。これは、前回調査された2015年とほぼ同じで、大きな増加は見られていません。
つまり、日本人は「平日は少しずつ睡眠時間が短くなっている」「その不足分を、週末の寝だめで十分に補えていない」という状態が続いているのです。この“わずかな不足”が毎日積み重なっていくことで、気づかないうちに「睡眠負債」がたまっていきます。

疲れが抜けない、集中力が続かないと感じる背景には、こうした長年の睡眠時間の変化が影響しているのかもしれません。
(2)体も仕事もダメージ!?睡眠負債が引き起こす影響
睡眠負債を放置すると、心身にさまざまな不調が現れます。短期間の寝不足でも、次のような影響が出やすくなります。
・疲労感やだるさが続く
・集中力や判断力が低下してミスが増える
・イライラしやすくなる
・気分が落ち込みやすくなる
・免疫力の低下で体調を崩しやすくなる
・ホルモンバランスが乱れて食欲が増し、太りやすくなる
そして、この睡眠負債が何ヶ月も積み重なると、深刻な健康リスクが高まります。
・認知症やうつ病、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスク
・心筋梗塞や脳卒中 など
自分では「慣れてきたから平気」と思っていても、知らず知らずのうちに仕事のパフォーマンスが大幅ダウンしている可能性があります。
また仕事面への影響も見逃せません。
睡眠不足が続くと仕事中にボーっとしたり判断ミスが増えるため、生産性が落ちてしまう恐れがあります。アイデアが出にくくなったり、コミュニケーションがぎこちなくなるなど、チームワークにも悪影響を及ぼすかもしれません。
またイライラが募って部下や同僚にきつく当たってしまうと、人間関係にも支障が出てしまいます。

睡眠負債はあなた自身の健康だけでなく、仕事の質や周りの人との関係性にも影響する重要な問題です。
2. 働く人のための睡眠負債セルフチェックリスト
ご自身の睡眠負債リスクを確認してみましょう。
いくつ当てはまりましたか?
該当が0~2個:リスク低
今のところ、睡眠負債の心配は少ない状態です。現在の生活リズムを大切にしながらこれからも「1日7時間前後の睡眠」を目安に、良い睡眠習慣を続けていきましょう。
該当が3~5個:中程度リスク
少しずつ睡眠負債がたまり始めている可能性があります。
平日と休日の寝る時間・起きる時間をなるべく揃える、夜更かしを控えるなど、「毎日の睡眠時間を確保する」ことを意識してみてください。
該当が6~8個:高リスク
睡眠負債がかなりたまっている状態と考えられます。
日中の集中力低下やイライラ、疲れやすさを感じているなら、睡眠不足の影響かもしれません。早めに生活リズムを見直し、「まずは寝る時間を増やす」ことから始めましょう。
該当が9~11個:非常に高いリスク
深刻な睡眠負債を抱えている可能性があります。
強い眠気や慢性的な疲労が続いている場合、体と心に大きな負担がかかっています。睡眠時間をしっかり確保しても改善しないときは、無理をせず、睡眠外来など専門機関への相談も検討してください。

このチェックで多く当てはまった方ほど「睡眠を後回しにしてきたサイン」といえます。今日から少しずつ、眠りを大切にする習慣を取り戻していきましょう。
3. 睡眠負債を返済・予防するには?
「睡眠負債を解消するにはどうしたらいいの?」
基本的にはしっかり眠る時間を確保するのが1番の対策です。ただし「じゃあ週末にまとめて寝よう」と週末だけ寝溜めするのは要注意です。生活リズムが狂ってしまい、月曜日にかえってだるさが増す(いわゆるブルーマンデーの状態になる)可能性があります。

睡眠負債の返済は、週末にまとめてではなく毎日のコツコツ返済が基本です。
(1)今日から出来る改善ポイント
では、忙しい毎日の中でどうやって睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めればよいのでしょうか?今日からできるポイントをまとめました。
朝起きたら日光を浴びる
朝の太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなるリズムを整えます。カーテンを開けて朝日をしっかり浴びましょう。
昼間に20分の短い昼寝
日中どうしても眠いときは、午後の早い時間に短い昼寝を取ってみましょう。20分程度の仮眠は頭をスッキリさせ、午後の作業効率アップに効果的です。ただし長い昼寝は夜の睡眠に響くのでNG。
健康経営が仮眠に注目!昼寝20分で社員の心も業績も変わる 適度な運動習慣
日中に体を動かすことも良質な睡眠につながります。おすすめは就寝の3~4時間前までに軽い運動(例えば夕方の散歩やストレッチ)をすることです。体がほどよく疲れて寝付きが良くなります。
【健康経営】運動機会の増進に向けた取り組み事例と今すぐできるアイデア集 寝る前はスマホやPCを見ない
寝る直前までスマホ画面を見ていませんか?スマホやパソコンから出るブルーライトは睡眠ホルモンの分泌を妨げてしまいます。就寝の1~2時間前になったら画面を見るのは控え、心と目を休めましょう。
ぬるめの湯船に浸かってリラックス
シャワーで済ませるより、寝る前にぬるめのお湯にゆっくり浸かるのがおすすめです。お風呂で体の深部体温が上がり、その後下がるタイミングで自然な眠気が訪れます。就寝の1~2時間前までに入浴を済ませると効果的です。
どれも今日から実践できる簡単な工夫です。すべて完璧にやる必要はありませんが、「いつもより30分早く寝てみる」「寝る前のスマホをやめてみる」といった小さな一歩から始めてみましょう。

毎日の積み重ねが睡眠負債の予防・解消につながります。
(2)睡眠は最高のパフォーマンス戦略
忙しい現代人にとって、睡眠時間の確保は簡単ではないかもしれません。しかし、睡眠は決してサボりでも贅沢でもなく、明日の自分のための投資です。十分に眠れば、頭が冴えて仕事の効率が上がり、気持ちにも余裕が生まれます。逆に睡眠負債を放置すれば、健康も仕事の成果も大きな代償を払うことになりかねません。
幸い、睡眠負債は「返済不能」な借金ではありません。今日から生活習慣を少しずつ見直していけば、必ず改善できます。まずは今夜、いつもより少し早めにスマホを置いて布団に入ってみませんか? しっかり眠った翌朝は驚くほどスッキリ目覚めて「睡眠って大事だな」と実感できるはずです。睡眠負債ゼロの快適な毎日を目指してできることから始めてみましょう!
4. まとめ
◎「睡眠負債」とは、毎日の寝不足が少しずつ積み重なった“睡眠の借金”
◎日本人の睡眠時間は年々短くなり、週末の寝だめだけでは補えていない
◎睡眠負債がたまると、集中力低下・イライラ・疲労感などが起こりやすい
◎放置すると、うつ病や生活習慣病など健康リスクも高まる
◎セルフチェックで当てはまる項目が多いほど、睡眠負債のリスク大
◎解消の基本は「毎日少しずつ睡眠時間を確保する」こと
◎睡眠はサボりではなく、仕事の質を高める“最高の投資”

この記事の監修 長谷 有希央
◎安眠インストラクター
◎睡眠&寝具インストラクター
◎健康経営アドバイザー
◎中小企業診断士 の資格を持つ「眠りと健康経営の専門家」です。